ノスタルジア
1、2泊用のスーツケースのコロコロは、固定式で、クルクルと回ってくれない。
回ってくれないから、段差に片輪が掛かると、スーツケースはバランスを崩し、全体で回る。
それを必死に、左手一つでなんとか制御しようとするが、その場合、やっぱり立ち止まる他ない。
真後ろを歩いている、革靴のサラリーマンが僕をキッと睨んだ。あまり、気分のいいものではない。
しかし、駅を出た時の景色を見れば、そんな気分もどこかに飛んで行って、消えた。
「ほお」
これが、第一声。「ほお」。西葛西駅前、「ほお」。