喪失の夜に、あなたがいた
第21章:本当の気持ち(楓 SIDE)
明莉が目を覚ましてから数日。
 まだ安静が必要で、長く話すことはできない。
 それでも──
 楓は毎日病室へ通った。

仕事は最低限に絞り、
 撮影も調整し、
 明莉のそばにいる時間を最優先にした。

病室の扉を開けるたび、胸の奥がきゅっと締め付けられる。

ベッドの上で静かに眠る明莉。
 呼吸器の規則的な音。
 包帯の白さ。

そのすべてが、
 あの日の恐怖を思い出させた。

(……守れなかった。そのことが凄く悔しい)

その言葉は、
 まだ胸の奥で疼いていた。

ある日の午後。
 さくらが病室に入り、
 楓の隣に静かに座った。

「楓。あなた、毎日ここに来ているのね」

「……はい。
 僕が明莉さんの顔を見ないと……不安で」

楓は明莉の手をそっと握った。
 その指先は、少しずつ温度を取り戻している。

さくらは楓の横顔を見つめ、
 静かに言った。

「楓。あなた、変わったわね。
 あなたはもう気持ちを隠さなくていいのよ」

楓は息を呑んだ。
< 104 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop