喪失の夜に、あなたがいた
第14章:玲奈の接近(玲奈 SIDE)
重森楓の名前をニュースで見たのは、
ほんの偶然だった。

企業の特集記事。
新規プロジェクトの発表。
その横に写っていた楓の写真を見た瞬間、
胸の奥がふっと温かくなった。

「……楓さん」

小さく呟いた声は、
自分でも驚くほど柔らかかった。

楓は、特別な人だ。
自分が隣にいるべき人。
自分が支えるべき人。

その感覚は、誰にも理解されなくていい。
理解される必要もない。

ただ、玲奈の中では
“それが正しい”と確信していた。

数日後。
SNSで偶然、別の名前を見つけた。

佐伯明莉。

女優。
復帰。
撮影再開。

その記事を読んだ瞬間、
胸の奥がひやりと冷えた。

(……この人が、楓さんの隣にいる)

それは事実ではない。
ただの噂。
ただの憶測。

でも、玲奈の中では
“十分すぎる理由”になった。
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