別にあなたに愛されなくても。〜死に戻った侯爵夫人は、二度と夫を愛さない〜
【アレク様へ

 シャーリンです。お返事をしてくださって、ありがとうございます。
 私はあなたの正体は聞きません。きっとあなたには、私に正体を明かせないほど尊いお方なのでしょう。

 ですが、もしできるなら、あなたにお会いしたいのです。そして、お礼が言いたいと思います。
 時を巻き戻してくださって、どうもありがとうございますと、どうか直接言わせてください。

 そして、一度目の人生で……私が亡くなった後、私の死の真相を暴いてくださったこと、嬉しく思います。私なんて、誰にも気にされていないのだと……そう思っていましたから。

 あなたの本のおかげで、私は夫の愛人の名前を知ることができました。そして、二人の計画についても……。
 あとは自分の力で、どうにかがんばってみようと思います。

 お返事、お待ちしております。

 追伸.もう怪我は治りましたので、ハンカチはお返しいたします。このハンカチは前の人生で私があなたに渡したものですから、あなたが持っていてくださるとうれしいです。お心遣いいただきありがとうございます】





「こんな感じかしら……」

 私は紙を四つ折りにして、ハンカチの中にくるんだ。そして彼と同じように、本にハンカチを挟む。

 ……読んでくれるかしら。いえ、きっと読んでくれるわよね。

「行きましょうか」
「もうお帰りになるのですか?」
「えぇ、目的は果たせたから……」



 馬車に乗り込んで、窓の外を見る。
 昨日の夜もこんな風に、空を見上げて帰った。

 ____メルローズ男爵、嫌な感じはしたけれど……まさか、私の死因に関係があったなんて。

 あの本には、「キャロラインは男爵の養子になった」と書かれていた。恐らく、その男爵というのがメルローズ男爵なのだろう。
 だとしたら、昨日メルローズ男爵に話しかけられた瞬間の夫の反応にも納得がいく。キャロラインを養子にするための大事なコマですものね。

 前の人生では見たことがなかったから、私がいないときに接触していたのでしょう。けれど、今の人生では私の評判が変わったみたいだから……あの下卑た視線を思い出す限りは、私を狙ってきていたわね。

 けれど、だとしたら不自然なのは夫の対応だ。メルローズ男爵は、キャロラインと結婚するための重要な存在のはず。
 それなのに、あんな風に私を……庇うような真似をして、男爵を蔑ろにするなんてどういうつもり?

 ____もしかして、私が行動を変えたことで……少しずつ何かがズレ始めてきている?

「……悪い方向に変わっていなければいいのだけれど」

 そんなことを考えながら、私はアレク様からいただいたメモを大事に握りしめるのだった。
< 25 / 62 >

この作品をシェア

pagetop