別にあなたに愛されなくても。〜死に戻った侯爵夫人は、二度と夫を愛さない〜
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 私が王立図書館へ来るのも、これで三度目。

 目的はもちろん、『シャーロット』……いえ、『シャーロット』に返事が挟まっていないかを確認するためだ。

 もうすっかり覚えた『シャーロット』の定位置まで一直線に移動して、その存在を確かめる。……よかった、今日もあった。ドキドキしながら、本を開く。そこにはもうハンカチはなくて、代わりに封筒が挟まっていた。
 その封筒は……蝋で封がされている。

 ____間違いない、これは王家の紋章だ。

 私が「正体は聞きません」と書いたことに対する、答えだと思った。

「やはり、王族の方……なのね」

 少し怖さも感じながら、私はサラからペーパーナイフを借りた。そして、ゆっくりと封を開けていく。今まではメモでのやりとりだったのに、急にこんなしっかりした封筒だなんて……。

 なんだか、嫌な予感がした。私にとっての、悲しい予感。
 封を開け終わった私は、震える手で便箋を開いた。




【シャーリンへ

 丁寧な返事を、どうもありがとう。私は、あなたのそんな思慮深く優しいところが好きです。

 先日、王都で男に絡まれたと風の噂で聞きました。怪我はありませんでしたか?
 子供を守って勇敢に立ち向かう、そんなあなたに恋焦がれています。

 そしてシャーリン、私はあなたに謝らなければならないことがあります。
 それは、今はまだあなたに会うことはできないということです。その理由は、きっとこの封筒を見たあなたなら察してくださることでしょう。

 でも、約束します。
 あなたが全てから解き放たれて、自由の身になった時。私は必ずあなたを迎えに行く。
 だから、その時まで……どうか待っていてくれませんか。

 いつでもあなたを想っています。
 忘れないで。私はいつでも、あなたの味方です。
 そしてそれは、私だけじゃないはずですよ。

 アレク】



「……ずるいわ」

 一番最初に出たのは、この言葉だった。

 彼が私に会えないのは、私が既婚者だから。そして、彼が責任ある立場だから……。
 夫の不貞が理由で離縁しようとしているのに、そんな私が王族と隠れて会っていたら、それこそスキャンダルだわ。
 アレクという名も、偽名ね。だって、王族にそんな名前の方はいらっしゃらないはずだもの。
 彼は徹底的に、私と会わないつもりなんだ。

 でも、なんとなくこれで、疑惑が確信に変わった。
 それは……先日王都で私を助けてくれたフードの男は、アレク様なのではないかということ。
「風の噂」なんて書いてあるけれど、そんなことが噂になるわけがない。私が大けがでもしていたら別だけれど、私は五体満足だもの。
 それに、アンナ……女の子を庇おうとしたことまで書いてある。これは、その場にいないとわからない内容だわ。

 でも、私が一番うれしかったのは、一番最後の言葉。

「私にも、味方がいたのね……」

 ぽつりと呟くと、近くで控えていたサラが「当たり前ですよ!」と声を張り上げた。次いで、アントニーも、「あ、俺も俺も!」と軽い調子で声をあげる。

「あなたたち……図書館なのに、声が大きいわよ」

 でも、そうか……私が気付いていない……いいえ、信じていなかっただけで、きっとたくさんの人が私のことを想ってくれている。
 そんなことに、今更気付くなんて。

 そういえば、イザベラ様にだって、「今度は私から誘う」と言っておいて、手紙の一つも出せていない。
 私、怖かったんだわ。誰かを信じて、また裏切られることが。

 でも、いいのね、信じても……。

「えっ、奥様なんで泣いてんすか!」
「あんたのせいよアントニー!!」
「俺のせい!?」

 ぽた、ぽたと雫が滴り落ちる。
 私、泣いているの? 泣いたのなんて、いつぶりかしら。

「もう、二人とも……ちゃんと二人のせいでもあるから、最後まで責任取ってちょうだいね」
「えっ、私もですか!?」
「やーい! お前のせいだってさ!」
「子供か!!」
「ふふっ、あははっ……!」

 私の言葉で再び小競り合いを始めた二人を見て笑いながら、私は返事を書いたのだった。



【アレク様

 シャーリンです。
 あなたのお気持ち、良く伝わりました。

 素敵な言葉を、どうもありがとうございます。

 頑張るので、見守っていてくださいね。



 早くあなたに会いたいです。】
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