別にあなたに愛されなくても。〜死に戻った侯爵夫人は、二度と夫を愛さない〜
「お嬢様、緊張されていますか?」
「正直に言うと……かなりしてるわよ」
「まぁ、そうですよねぇ……こんな豪華な舞踏会に、王家から直々に招待状が届くなんて何事!?って私も思いましたから」

 そう、私……シャーリン・エルフィナードは、見覚えのある王家の豪華な紋章で封がされてある、大袈裟な招待状を受け取ったのである。

 国王に挨拶だなんて、それこそデビュタント以来じゃないかしら……。

「まぁ、お嬢様なら大丈夫ですよ。だってほら! 今日のドレスを身にまとったお嬢様は、まるで太陽のように明るくて美しいですもの」
「ふふ……私を太陽と呼ぶなんて、あなたくらいのものよ」
「そんなこと言って~……お嬢様が離縁されてから、縁談を捌くのすごい大変だったんですからね?」
「あら、ごめんなさい。でも、きっとそれも今日で終わりだから……」
「え?」
「じゃあ、行ってくるわね」



 私は父にエスコートされながら、会場へと入場する。
 そして王族の皆様の前まで歩いて挨拶をしに行くと、その中の一人の青年が立ち上がった。

 この国の王太子、アレクシス・レイン・フォルティス殿下だ。

 会場がざわつく。
 しかし王太子殿下はそんな周りの反応など一切気にしない様子で、私に跪いてあるものを差し出してきた。

 ____よく見覚えのある、白いハンカチだった。

 私は思わず笑いながら、殿下に話しかける。

「やっぱり、あなただったのですね……アレクシス王太子殿下。……いえ、アレク様」
「シャーリン嬢。随分お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。このハンカチを受け取っていただけますか?」
「…………はい、喜んで」

 手と手が触れ合う。
 会場からわぁ、と大きな歓声があがった。

 父は驚き、国王陛下と王妃様は笑っている。母は、会場の隅で泣いていた。

「よろしければ、私と一曲踊ってくださらないでしょうか」
「えぇ、もちろんですわ」

 会場のダンスホールの中心まで歩くと、オーケストラの生演奏が始まった。




 きっと、私の幸せな日々はここから始まる。
 そんな予感がしていた。
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