別にあなたに愛されなくても。〜死に戻った侯爵夫人は、二度と夫を愛さない〜
 皆さん、こんにちは。私はサラといいます。子爵家の四女の生まれなのですが、そのことは今は関係ないので割愛させていただいて……。
 以前はクラウゼン侯爵家で働いていたのですが……色々あり、現在は王太子殿下の婚約者であるシャーリン・エルフィナード様の専属侍女をさせていただいております。

 簡単に色々とは言いましたけど、ほんっとうに大変だったんですよ!
 まず侍女といたしましては、結婚初夜がなかった時点で大問題なのです。ですから、あの時の奥様……じゃなかった、お嬢様の憂い気な表情と言ったら……!
 ……まぁ、あとから「あれは演技だったのよ」と教えてもらって、驚愕したのですけれど……。

 とにかくそれ以来、私は侯爵様のことをあまり良くは思っておりませんでした。侯爵様は表面上はお嬢様に優しかったけれど、実際は初夜をすっぽかすような男性なんですもの。

 しかも、お嬢様から「ヴィクトル様の浮気調査をしてほしいの」と言われた時は、怒りで噴火してしまいそうでした!!
 こんなに美しくて賢くて素晴らしい奥様がいるのに、浮気なんてありえないー!って!!

 それで、実際に尾行してみたらびっくり! 本当に浮気してるんですもの、もう許せませんでした!

 ……だから、お嬢様に文通相手ができた時は、このサラ、心の底から嬉しかったのです。なんせ、お手紙を読んでいる時のお嬢様ったら、完全に恋する乙女なんですから!
 本人だけが気付いておりませんでしたけれど……。

 でも、まさかそのお相手がアレクシス王太子殿下だなんて思っていなかったので……お嬢様に王太子殿下が跪いたと聞いた時、もうびっくりしすぎてお盆の上の淹れたての紅茶を誤ってアントニーに全部かけてしまいました。

 アントニーはいまだにそのことを根に持っているみたいで、私のことを「お茶かけ女」と呼んできたりします。腹立つ男ですよね、本当に。
 まぁ、あんな奴にも一応良いところはあって……今度結婚することになったんですが、お嬢様が正式に王太子妃になるまでは待つことにいたしました。

 え? あんな男の何がいいのかって? 
 ……なんででしょうね。なんか……ノリというか、勢いというか、幼馴染の腐れ縁で結婚したようなものなので、お嬢様たちみたいに熱々カップルというわけではないんですよ、本当に。

 そう!!
 お嬢様ったら、本当に毎日王太子殿下とラブラブで……なんかもう、見ているこっちが「キャー!」ってなっちゃうくらいお熱いんです!

 というか、私は王太子殿下のことを今までよく知らなかったんですが……あんなに甘い言葉をかける方だったんですね。噂では、冷徹な王太子殿下だと聞いていたので、てっきりそうなのかと……。

 それとも、お嬢様に恋をして変わったのでしょうか? うーん、真相はわかりませんけれど、なんだかそんな気がいたしますね。

 あ、そうそう。お嬢様に聞いてみたんですよ。「王太子殿下のどんなところに惹かれたのですか?」って!

 そうしたら、なんて答えたと思います?
「え? うぅん、迷うけれど……全部、かしら……」ってお答えになったんですよ!
 もう熱すぎて火傷するかと思いました、実際に火傷したのはまたしてもお茶をかけられたアントニーだったんですけれど……。

 あ、そろそろお嬢様の朝のお支度の時間ですね。私はもう行かなくちゃ。

 では皆さん、お元気で! 以上、サラでした~!
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