財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
「いただきます」
「……どう?」

 緊張しながら惺也くんの反応を見ていると、口いっぱいに頬張りながら何度も頷いてくれた。

「うまい‼」
「ふふ、お口に合うようでよかった」

 実家暮らしが長かったから、ほとんど母親の受け売りだけど……。箸が進む様子を見て、胸を撫で下ろす。
 やっと、妻らしいことができた。たとえ、形だけの妻だとしても……。
 他愛ない会話をしながら、惺也くんが「これ、うまいな」と言うたびに、これが毎日だったらいいのになぁと思った。

 食事を終える頃には玄関での激しいやり取りが嘘みたいに、二人の距離は自然と近くなったように思えた。
 夕食後に私は入浴を済ませ、寝室のドレッサーの前に腰を下ろした。
 惺也くんに買ってもらったもので、丁寧にスキンケアを施す。
 ドレッサーの鏡越しに視線を向けると、惺也くんはベッドサイドのソファに腰かけ、タブレットを眺めている。その横顔は穏やかで、仕事ではなさそうだと思い、今なら胸の奥に沈めてきたことを聞けそうな気がした。

「……惺也くん」

 彼の方に向き直り、そっと声をかける。
 すると、彼は私の声に反応するようにタブレットから顔を上げた。

「ん?」
「少し……話をしてもいい?」

 惺也くんはタブレットをサイドテーブルの上に置き、私の方へ体を向けた。

「どうした?」

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