財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 記者会見当日、都内の高級ホテル。
 十八時開始の記者会見を前に、会場はすでに熱気に包まれていた。

 報道陣の数は、通常のM&A会見の比ではない。
 フラッシュの光が絶えず瞬き、ライブ配信のカメラが何台も並んでいる。
 そして──会場の雛壇には、場違いなほど大きな 金屏風 が立てられていた。

「趣味が悪すぎるだろ」

 新藤と控室にいる俺は、タブレットで各社のライブ映像を眺めていて、思わず声が漏れた。

 夜のニュース番組の時間に記者会見を当てるあたり、腹の底が透けて見えている。
 あの女――宝生愛華が考えそうなものだ。
 会場を映し出すライブ画面には、すでにテロップが踊っている。

【宝生インダストリー、片桐キャピタル買収を正式発表へ】
【M&Aと同時に、婚約発表か!?】
【財閥婚の行方は──】

 俺は目を閉じて、李茉の顔を思い出す。
 屈託のない笑顔で、俺の名前を呼ぶ李茉。
 俺の腕の中で気持ちよさそうに寝息を立てている李茉。
『いってらっしゃい』と笑みを浮かべ、頬にキスをしてくれる李茉。

 半年にも満たない月日の中でも、俺の中に李茉の存在が深く刻まれている。
 ――大丈夫。この想いがある限り、俺は俺でいられる。

「社長、そろそろお時間です」

 会場の確認をしていた及川が、呼びに来た。

「行くか」
「……そうだな」

 新藤の声かけで俺は立ち上がり、ジャケットのボタンを留めた。
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