財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 次の瞬間、部屋のドアがゆっくりと開き、その奥から片桐くんが姿を現した。

「大変お待たせいたしました」

 スタッフ全員が深々とお辞儀をする中、彼は真っすぐと私のもとへ歩み寄る。

「……悪くないな」

 私の全身をチェックした彼は、わずかに口元を緩めた。
 褒め言葉なのかどうか判断がつかない言葉に、胸の奥がざわざわと騒ぎ出す。
 だって彼の顔が、どこか満足しているようにも見えるからだ。

 私の手を取って腕に絡ませた彼は、踵を返した。

「行くぞ」
「はい……!」

 私の歩幅に合わせてか、ゆっくりと歩く彼を横目でちらりと見る。
 何度見ても……イケメンだなぁ。

「よだれが垂れてるぞ」
「なっ……!」
「フッ……、お前、ホント見飽きないな」
「っっ」

 デートは、まだこれからだというのに……。
 すでに彼のペースに完全に呑まれている――。
 私は腕から伝わる彼の体温に、ほんの少しだけ心を躍らせていた。
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