財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~
 最後に味噌汁をテーブルに置いて、彼も席に着いた。

「……いただきます」
「味はどうだ?」

 湯気の立つ味噌汁を一口すすると、思わず笑みが漏れた。

「お出汁の旨味が効いてて、すごく美味しい!」
「……そうか」

 彼はわずかに表情を緩めた。

「どうして、私の好みがわかったの……?」
「フッ……なんでだろうな?」

 悪戯っぽく微笑んだ片桐くんは、椅子の背にもたれた。

「攻略相手のリサーチは、投資家の初歩的スキルだ」
「んっ……!」

 当然だと言わんばかりの口ぶり。
 ――そうだった。九石精工の負債額も知っていたし、特許技術のことも熟知していた。
 でも、契約結婚なのに……私の好みの食事を自らつくってまで……?
 早起きしてまでつくってくれるなんて……。

 無意識に期待してしまう。
 彼はビジネスで契約婚を提案したけど、本当は──ごく当たり前の夫婦の生活を望んでいるんじゃないかって……。
 いや、ない。そんなはずない。私は、彼の仕事に利益を生む〝金の卵〟なんだろうから。
 期待してはいけない。彼には愛なんて概念すらなさそうだもの。

 お金こそ全て──拝金至上主義なんだから。
 この結婚生活に〝愛〟は存在しない。そう自分に何度も言い聞かせた。
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