愛が全てじゃないけれど

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〈土曜の三時にマンションに迎えに行きます。楽な格好で来て〉

 少し悩んで、直前まで迷ったけれど、私はメッセージを素直に受け止めて、着慣れたニットにロングスカート、ショート丈のコートでマンション前に立っていた。

 時間通りに来てくれた成悟さんもまた、ニットにジーンズ、ダウンコートの格好で、初めて見るプライベートの装いは新鮮。

 助手席に乗ると、彼は車を走らせた。

 時間的に食事に向かっているのではないと思うが、私は目的地を聞かなかった。

 神海さんに奈都との惚気話を聞かされたと笑って話す彼の声が、どこか緊張を感じさせたから。

 もしかしたら、私が思うような色っぽいデートにはならないのかもしれない。

 そんな気がして、成悟さんのマンションに着くまでドキドキしきりだった。

「疑ったりしてませんよ?」

 エレベーターを待っている時、言った。一応。

「うん。でも、話したいこともあったし」

『話したいこと』に、緊張が高まる。

 成悟さんの住むマンションは、私のマンションの三駅隣にあった。

 とはいっても、私のマンションから徒歩ニ十分ほどの場所にある駅からで、更に成悟さんのマンションも駅から十分はかかるらしいので、電車で来たら三十五分くらいはかかりそう。

 会社帰りなら、ニ十分ほどだろう。

 十階建てのマンションは、地下と一階に駐車場があり、住居は二階から。

 低層階は家族向けで、高層階が単身者向けらしい。

 成悟さんはエレベーターに乗ると、八階を押した。

 エントランスの指紋認証に加えて、エレベーターではモニターに防犯カメラの映像が映し出されていて、驚いた。

 悪事を働こうにも、こうもはっきり証拠が残っていると見せつけられると、怖くなるだろう。

 私もいつかオートロック付きのマンションに住みたいと思っているが、今は駅が近くて安価であることが条件になってしまっている。

 ただ、今のマンションは管理人が一階に住んでいて、防犯カメラも設置されているから、そう心配はない。

「どうぞ」

 玄関ドアを大きく開けて、招かれる。

 私は「お邪魔します」と言って、彼の部屋に足を踏み入れた。

「そんなに広くないんだけど」

 何をもって『そんなに』と表現したかはさておき、私には十分に広い空間だった。

 私の部屋の倍はありそうな広さのリビングダイニングには、大きな壁掛けのテレビと、その正面にガラスのローテーブル、そして優に五人は座れそうな大きさのソファ。

 広めのキッチンカウンターをダイニングテーブル代わりにしているらしく、ハイチェアが二脚ある。バーカウンターのようだ。

「ソファに座って。コーヒーでいい?」

「はい。ありがとうございます」

 真っ白い壁にダークブラウンのフローリング。テーブルとソファの足元には毛は短いが柔らかい、フローリングより少し明るいブラウンのラグ。


 オシャレだ……。


 言われた通りソファに座り、大きな窓の向こうを眺める。

「八階って、意外と低いんだよね。建物、結構見えるでしょ」

 確かに、窓の向こうは真っ青な空、ではない。

 普通にビルやマンション、商業施設が見える。
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