通りすがりの俺様
「いずる、水族館に行かない?」
と社食を出たところで佐保子が訊いてくる。
一鷹たちは早めに部署に戻ってしまっていた。
「そう来たか……」
といずるが呟くと、
「網代木さんより先になまめかしいタコを手に入れるのよっ」
と佐保子は言い出す。
……声がデカい、声がデカい。
「ああ、なんだ。
タコ買いたいだけなら、買ってきてあげるよ。
ちょうどついでがあるから」
「タコ買うついでって、なに……?」
と言われたが、網代木の行った水族館近くのショッピングモールにちょうど用事があったのだ。
「売店だけ入れたよね、あそこ」
「えっ? ほんとに買ってきてくれるの?
ありがとーっ。
今度アイスおごるねーっ」
水族館興味ないから助かった、と言ったあとで、佐保子が、
「それにしても、網代木さんは水内さんが好きなんじゃなかったの?
いずる、水内さんのいいところ、たくさんアピールして、矢端さんの方向かないようにしてよ」
と無茶を言う。
「あんただったら、たくさん思いつくでしょ、水内さんのいいところ」
「えっ?
いいところ……?
……何処?」
と思わず言ってしまい、近くを通った満に苦笑いされてしまった。