通りすがりの俺様


「矢端秀は、もしかして、携帯を持ってないんじゃないか?」

 仕事終わり。
 会社近くのソフトクリーム屋で一鷹が言った。

 冬なのに、ソフトクリーム屋の前には、行列ができている。
 みんな物好きだな、と思いながらも、いずるも震えながら並んでいた。

「携帯のおかげで、何処までも仕事が追いかけてくるからな」

「携帯持たないとか、会社が許してくれないのでは……?」

 仕事用の携帯だけあるんじゃないか? と一鷹は言う。

「でもそれだと、社外の用事で緊急のとき、なにで連絡するんです?」

「ポケベルとか?」

「ポケベル、まだあります!?」

「うちの親の時代はポケベルだったらしく。
 父親は母親に、打ち間違えては、『キョウハ サモイネ』とか入れてきてたらしいぞ」

 ……それは可愛らしいですね。

 っていうか、今、まさにサモイデスネ。

 たまたま、あそこのソフトクリーム屋、いつも行列ですよね、とポロッと言ったら、

「じゃあ、並んでみよう」
と一鷹が言い出したのだ。
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