通りすがりの俺様



 一番乗りに家に帰ったいずるが、米くらい炊いておこうか、と広々として気持ちのいいキッチンで米を洗っていると、一鷹が帰ってきた。

「あ、お帰りなさい」
と振り返り言うと、一鷹は何故か立ち止まり、目を細めてこちらを見ている。

「なんかいいな。
 料理しながら、お帰りなさいとか言ってもらえるの」

 いやいや。
 米研いでただけなんで……。

 ザバーッと水を流しながら、いずるは赤くなる。

「今日の晩ご飯はなにかな」
「さあ?」

『さあ?』
 ……キッチンに立っている人間が言っていいセリフではないな、と思いながら、とりあえず、水の量を測り、時間を確認し、鍋をIHコンロの上に置く。

 やり遂げたっ、と思っていた。

「いや、なにを……?」
と矢端と秀には言われそうだったが。

 ワインセラーからワインを出しながら、一鷹が言う。

「手伝おうか」
「あ、いえ、もう終わったんで」

 他にもなにか作っておこうかな。
 でも、迂闊(うかつ)なものを作って、秀さんたちの料理の組み立ての邪魔をしては……と思ってしまう。

「水内さん、なにか作られますか?」
「いや、そんな得意料理もないから」

「でも、魚さばけるの、格好いいですよね」
と言うと、気をよくしたタラの化身が、

「よし、俺が教えてやろう」
と言い出す。

 ……昨日、習ったばかりなのに?
と思ったが、なんだかんだで一鷹は要領がいいので、もう手際もよくなっていることだろう。
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