通りすがりの俺様
「朝、いずるの部屋を訪ねていったら、いなかったんだ」
社食で一鷹がそんなことを愚痴っていた。
……あなたがおかしな話を矢端さんたちにするからですよ。
まあ、矢端も秀も単に、あの家での探検ごっこが楽しいだけのようだが。
「これから日々、部屋を移動してくことにします」
といずるは宣言する。
「何処でも好きに使っていいって言いましたよね」
と一鷹に確認した。
荷物は前の家にほとんどあるので、移動も楽だ。
そこに、
「なになに、なんの騒ぎ?」
と満がトレーを手にやってくる。
「いや、姫の部屋を見つけたら、姫にキスできるって話」
と矢端が笑って言う。
「姫、誰?」
ここで、はいとは言えないな……。
何処が姫なのよ、と100%、網代木さんたちにシメられそうだ、といずるは思う。
矢端が手でいずるを示すと、
「そうなんだ?
俺も参加していい?」
と笑って満が言ってくる。