通りすがりの俺様



「朝、いずるの部屋を訪ねていったら、いなかったんだ」

 社食で一鷹がそんなことを愚痴っていた。

 ……あなたがおかしな話を矢端さんたちにするからですよ。

 まあ、矢端も秀も単に、あの家での探検ごっこが楽しいだけのようだが。

「これから日々、部屋を移動してくことにします」
といずるは宣言する。

「何処でも好きに使っていいって言いましたよね」
と一鷹に確認した。

 荷物は前の家にほとんどあるので、移動も楽だ。

 そこに、
「なになに、なんの騒ぎ?」
と満がトレーを手にやってくる。

「いや、姫の部屋を見つけたら、姫にキスできるって話」
と矢端が笑って言う。

「姫、誰?」

 ここで、はいとは言えないな……。

 何処が姫なのよ、と100%、網代木さんたちにシメられそうだ、といずるは思う。

 矢端が手でいずるを示すと、
「そうなんだ?
 俺も参加していい?」
と笑って満が言ってくる。
< 256 / 307 >

この作品をシェア

pagetop