あなたは悪魔で運命の人
…翌日…
「ねえ…恵美それでさぁ…彼がね…。」
元気になった京子は今日もランチを食べながら、彼の話に夢中になっている。
(…よかったね…京子…)
穏やかな日常、いつものランチ時間が戻って来た。
京子と私はお気に入りの、イタリアンレストランでランチをしていた。
このお店はジェラートも美味しく、食欲が出た京子は食後のジェラートを選びながらご機嫌だった。
「う~ん、ピスタチオも良いけど、さっぱりのオレンジも捨てがたいなぁ。」
ただ、私だけは穏やかな日常では無かった。
昨日、龍崎部長の口づけから、体の中が熱く疼き治まらない。
私の体はどうなってしまったのだろう。
私は顔も熱く火照りを感じていた。
恐らく頬が赤くなっているだろう。
「恵美、なんか顔が赤いけど…熱でもあるんじゃない?」
京子が私の額に触れた瞬間にビクッとしてしまった。
「ごめん、京子。風邪かもね、後で医務室へ行って薬もらってくるよ。」
「私も一緒に行こうか?」
「大丈夫…京子にうつすと嫌だから一人で行くよ。」
「…うん。じゃあマネージャーには伝えておくね。」
「ありがとう。助かる。」
京子は風邪と伝えた私に、疑うことなく心配してくれた。
自分自身でもこんなことは初めてなので、体がどうなってしまったのか良く分からない。
(解熱薬をもらえば少し治まるかも知れない。)
うちの会社には医務室がある。
提携している近くの病院から看護師や医師が交代で来てくれているのだ。
コンコンコン…カチャ…
医務室の扉を開けると、看護師の可愛い女性が振り向いた。
その女性は私に気付き、心配そうな瞳を向けてくれた。
「…どうなさいましたか?」
「…あの…熱があるみたいで解熱薬をお願いします…それと、少し休んで良いですか?」
「大丈夫ですか、それでは鎮痛解熱剤お渡ししますね。」
「少し休むと良くなりそうです。奥のベッドを使ってもよろしいですか?」
「もちろんです。ゆっくりしてください。でも私はこれから少し外出してしまいますが、遠慮なく寝ていてくださいね。」
「ありがとうございます。」
(よかった…少し一人で落ち着こう…)
沈痛解熱薬を飲んだ私はベッドに横になり目を瞑った。
ベットの横にはカーテンがあり見えないようになっているのがとても落ち着く。
疲れていたこともあり、すぐに眠ってしまったようだ。
暫くすると、私は何かの音に気付き目が覚める。
時計を覗くと、1時間以上はもう寝ていたようだった。
私はゆっくりと体を起こして、ベッドに座って軽くため息をついた。
その時カチャリとドアの空く音がして誰かが部屋に入ってくる音がした。
コツコツコツ。
その音が男性が靴で歩く音のように聞こえた。
「鈴木さん、いるのかい、大丈夫かな?」
その時、どこかで聞いたことのある声がした。
低く通る声の男性だ。
(…この声…まさか…)
「龍崎だけど、入って大丈夫かな?」
(なんで…ここに部長が…だめ…今…会いたくない…)
「…はい。ど…どうぞ…」
カーテンが少し開けられ、そこには龍崎部長が立っていた。
心臓がドクンと跳ねる。
「さっき、マネージャーから聞いてね。君の体調が悪いと言うから心配したよ。」
「あ…あの…もう大丈夫です…ご心配おかけしました。」
「…そう。良かった。」
「あの…龍崎部長…」
「…どうした?」
(自分が抑えられない、私、何を言おうとしているの、自分に嘘がつけない。)
「あの…昨日の…続きを…」
「昨日の続き?」
「続きを…して欲しい…です。」
「なんの続きかな?」
「だから…あの…昨日してくれた…」
「何をしてあげたっけ?言ってくれないとわからないよ。」
「私に…き…キス…してください…」
(私ったら、何を言っているの!)
私は自分の言ってしまった言葉に驚いた。
しかし、言ってしまった言葉は
もう引き返すことはできない。
龍崎部長は一瞬驚いたようだったが、すぐに瞳が熱を帯び吸い込まれるような色に変わった。
「…いい子だ…良く言えたね…沢山あげるよ。」
龍崎部長は私の顎を引き上げる。
唇に柔らかく温かい感触。
それだけで体が溶けそうな感じがした。
(この感触…ずっと前から欲しかった気がする…何故だろう…)