私のイケメンヒーローは、どこかおかしい
その夜。

玄都国の皇宮では、各国の客人を招いた宴が開かれていた。

ルーファンスも、マ国の使節団の一員として宴に出席していた。

昼間、庭園で出会った少女の姿を探してしまう。

けれど、広い宴の中では見つけることができなかった。

一方、リリアもまた、リュミエラ国の一員として宴に出席していた。

彼女も、昼間に再会した青年の姿を無意識に探していた。

まさか、こんな場所で再び会えるとは思っていなかった。

やがて、玄都国の皇帝が宴の中央へ進み出た。

「皆に紹介しよう」

皇帝の声に、宴にいた者たちが静かに視線を向ける。

「こちらは、マ国の第一皇子――ルーファンス殿下。そして、その婚約者であるクラリス嬢だ」

その言葉を聞いた瞬間。

リリアの動きが止まった。

「……え?」

視線の先にいた青年。

昼間、庭園で話したあの人。

名前も知らなかった、あの青年。

その正体は――マ国の第一皇子だった。

けれど、それだけではなかった。

皇帝は続けて、反対側にいるリリアを紹介する。

「そしてこちらは、リュミエラ国の第一皇女――リリア殿下。そして、その婚約者であるエリオット公子だ」

今度は、ルーファンスの表情が固まった。

「…………」

目の前にいる少女。

昼間、庭園で笑っていた少女。

何度でも会いたいと思った少女。

その正体は――リュミエラ国の第一皇女だった。

そして、その瞬間。

二人の頭の中に、あの日の出来事が蘇る。

両国の皇帝から持ちかけられた政略結婚。

自分たちが拒んだ、見知らぬ相手との結婚。

――まさか。

ルーファンスとリリアの視線が重なる。

二人とも、言葉を失っていた。

目の前にいる相手こそが――

自分たちがかつて政略結婚を拒んだ、その相手だった。

二人はただ、互いを見つめたまま完全に固まっていた。
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