私のイケメンヒーローは、どこかおかしい
玄都国での宴が終わり、数日が経った。

ルーファンスはマ国へ戻るため、玄都国を後にした。

馬車の窓から見える景色が、少しずつ遠ざかっていく。

けれど、ルーファンスの頭の中には、玄都国で出会った一人の少女の姿が残っていた。

庭園で笑っていたリリア。

名前を知る前から惹かれていた。

もう一度会いたいと思った。

そして、ようやく知った彼女の正体は――。

自分が政略結婚を拒んだ相手だった。

「……リリア」

初めて口にした名前は、思っていたよりも自然に唇からこぼれた。

一方、リリアもまた、リュミエラ国へ戻る馬車の中にいた。

窓の外を眺めながら、何度もあの青年のことを思い出していた。

ルーファンス。

自分が政略結婚を拒んだ相手。

それなのに、庭園で出会った時は、ただ一人の青年として惹かれていた。

知れば知るほど、胸が苦しくなる。

もし、最初から相手が彼だと知っていたなら。

自分は、あの政略結婚を拒まなかったのだろうか。

そんな考えが浮かんでは、リリアは小さく首を振った。

今さら、答えが分かるはずもない。

やがて、二人はそれぞれの国へ帰り着いた。

ルーファンスはマ国の皇宮へ。

リリアはリュミエラ国の皇宮へ。

二人の間に広がった距離は、玄都国で出会う前よりもはるかに大きく感じられた。

けれど――。

二人の心には、もう一人の存在が残っていた。
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