『付き合ってない、たぶん』上
いつも試合中、どんなに強い相手を前にしても冷静沈着なエースが、今は耳まで真っ赤にして髪をかきむしっていた。

中等部の頃から、ずっと春だけを見てきた。

あいつの無防備な笑顔も、自分の肩に頭を預けて眠る体温も、全部自分だけのものにしたかった。

(あいつの『初めて』を貰うのは拓海じゃなくて、俺だ。男同士とか幼馴染とか、そんな生ぬるい関係、今日で全部ぶっ壊してやる……!)

蓮はギラついた鋭い瞳で、中庭のステージがある方向を睨みつけた。

振られて気まずくなる恐怖なんて、春を他の男に渡す絶望に比べたらどうってことない。

「春。お前を、誰にも渡さない。俺だけを見てろ」

誰もいない屋上で、蓮は本番さながらの、重苦しいほどの独占欲を込めて、その言葉を何度も口の中で練習した。

――お互いに、相手が「拓海に告白する(あるいは付き合う)」と思い込んだまま、

「幼馴染の終わり」を賭けて、必死に告白の練習を繰り返すふたり。

いよいよ運命のステージ裏での、最悪で最高の鉢合わせの時間が近づいていた。
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