君がいる夜
序章 ある雨の日
「…ごめん、ごめんね…、」
ひとりの少女が雨が降りしきる夜、両膝を地面につき、隣りに座る少年へ贖罪の言葉を口にする。
少女の頬を伝うのは、雨なのか涙なのか最早分からない。
「大丈夫だから…、」
少年は、優しくそう答えた。
ふたりの着ている白かったはずの半袖の制服は赤黒く染められており、強い雨が洗い流すように降り続ける。
少女の右手には刃物が握られていた。
まるで、決して手放さないという意志が見えるほど強く握られていた。
その傍らに、土のついたシャベルが転がっている。
少女は少年を守るために。
少年は少女を守るために。
あの雨の夜、ふたりは誰にも言えない秘密をそれぞれ抱えた。
それが、この先どれほど自分たちを縛ることとなっても。
< 1 / 4 >