恋と夢と愛と
野津くんは十五歳でデビューして、その年の新人賞に輝いた。
グループでは無く、ソロアイドル。
デビューの翌年には、俳優としてもデビューを果たす。
当時、大型の新人アイドルが出て来たと、業界内で話題になり、社長から野津くんの話を聞いたが、アイドルには興味が無かったので、へぇと私は流した。
五年後にドラマで、ダブル主演を務める事になった。そこで野津八尋を認識したのだった。
撮影が始まる前に野津くんが出演した、映画とドラマを観て、アイドルに偏見を持っていた自分を恥じた。
それまで、共演して来たどのアイドルとも違う。
アイドルが本業だが、俳優の仕事にも本気なのが伝わった。
演技に上手い下手は、あまり関係無い気がする。
観てる人の心に響くかどうか。
「黒河咲です。」
台詞読みで初めて顔を合わせた時、私は野津くんに手を差し出し握手を求めた。
「……野津八尋です。」
野津くんは私の手を握った。
「今日、お会いして改めて撮影が楽しみになりました。三ヶ月宜しくお願いします。切磋琢磨しながら、頑張りましょうね。」
「あの、敬語はやめて下さい。僕の方が年下で後輩ですから。」
「……分かった。宜しくね、野津くん。」
「こちらこそ宜しくお願いします、……黒河さん。」