軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜
すっと指先で涙を拭い去る。
その横顔はどこまでも凛として、けれど切なかった。
夕暮れの橙色の陽光が、麒麟堂の入り口を優しく照らし出す。
暖簾の下に差した人影に、凪はふと顔を上げた。
そして、息を飲み、目を見開いた。
軍服ではない、見慣れた白シャツにズボン姿。
手に下げた革鞄からは、三毛猫の結丸がひょっこりと顔を覗かせている。
そこに立っていたのは──愛おしそうに、穏やかに微笑む将臣だった。
凪の時が止まる。
眩しい夕日の光が、二人の間をどこまでも温かく染め上げる。