軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜
凪の手が力なく落ちる。
「どうした、凪」
将臣の問いに、凪は首を傾げながら答える。
「ええと……小さい可愛いお花が見えました」
「どんな花だ」
「紫の……釣鐘のような形の花でした」
「紫の……釣鐘……?」
将臣が言葉をなぞった瞬間、その肩がビクッと跳ねた。
「将臣様……?」
視線を凍りつかせたまま、将臣が低く呟く。
「……ジギタリスだ」
「ジギタリス……?」
聞き慣れぬ単語に、凪が眉を寄せる。
将臣の中で、バラバラだった破片が一気に噛み合っていく。
(とても医者の投薬ミスとは思えない。多分……)
ごくりと喉を鳴らした。
「誰かが……ジギタリスを義父上に飲ませている」
将臣が顔を歪ませ、ゆっくりと凪を見た。
「──これは、事故ではない」


