リーガル・ラブ〜イケメン弁護士はお堅い彼女のハートを盗みたい〜
美術館に併設されたカフェで軽く昼食を食べると、次はホテル巡りをすることにした。
まずは「水盤テラス」が象徴的なリゾートホテルへ行ってみる。
「すごい、湖の中にいるみたい」
ロビーを抜けた先に広がる円形のテラスは、まるでインフィニティプールのように芦ノ湖の水面と一体化し、座って周りを眺めると水に浮かんでいるような気がした。
「なんてきれいなの。自然の中に溶け込んだみたい」
ふいにカシャッと音がして振り返ると、壮志がスマートフォンから顔を上げる。
「いい写真が撮れた。これ、ロック画面にしてもいい?」
「ええ!? 私の写真をですか? だめです!」
「どうして? ほら、横顔がすごくきれいだ」
見せられた画面には、遠くの湖に目をやって微笑む優香の横顔と、青空の下で陽の光を受けて煌めく水面が捉えられていた。
「ね? いい写真だろ?」
「でもロック画面にするのはだめです。肖像権があるでしょ?」
「それを言われると困るな。じゃあ、こっそり見返すだけならいい?」
「まあ、こっそりなら」
「ありがとう。これでいつでも優香に会える」
嬉しそうに言われて、優香の顔は真っ赤に火照った。
「ん? 何、照れてるの?」
「てっ、照れてません。その、名前を呼ばれるのに慣れてなくて……」
「可愛いな。じゃあ早く慣れるようにたくさん呼ぼう」
そう言うと壮志は腕を伸ばし、優香の頭を抱き寄せて耳元で「優香」とささやいた。
優香はもう顔から火が出そうになる。
「あの、古賀様。おやめください」
途端に壮志は、モアイ像のような顔になった。
「ちょっと、その呼び方どうにかならない?」
「どうにか、とは?」
「ここは職場じゃないんだから、名字じゃなくて名前で呼んで」
でも、と優香は戸惑う。
「うっかり『マリナ・ヴィスタ』で、お名前を呼んでしまってはいけませんから」
「けど、『古賀様』なんて呼ばれたら、周りの人にパパ活と間違われそうだ」
「パパ活!? まさかそんな。私、24ですよ?」
「俺とは8才も違う。これでも気にしてるんだ、君との年の差を」
「そんなこと気にしなくても……」
そう言ってから優香はふと疑問に思った。
「パパ活って、犯罪なんですか?」
「相手が未成年ならね。会ってお小遣いを渡したり食事をしただけでも、刑法224条の『未成年者誘拐罪』に該当するおそれがある」
「えっ、誘拐?」
「そう。甘い言葉で相手をそそのかす誘惑も、法律上は誘拐とみなされるんだ」
「強引に連れ去った訳ではなくても?」
「ああ。たとえ相手の同意があっても、未成年ならそれは無効。未成年者誘拐罪は、保護者の監護権を守るための法律でもあるからね。保護者の許可がなければ監護権の侵害となって、犯罪が成立する。この罪には罰金刑がないから、起訴されれば執行猶予がつかない限り刑務所へ行くことになる」
そうなのですね、と優香は神妙に頷いた。
「という訳で『古賀様』呼びはやめて。イリーガルな関係を疑われては困る」
「わかりました。それでは、えっと……古賀さんで」
ガクッと壮志は首を折る。
「どこが違うんだよ?」
「全然違いますよ。フランクになったでしょ?」
「なってない! ったくもう」
壮志は強引に優香の肩を抱き寄せた。
「え? あの」
「名前で呼んでくれないなら、見た目で恋人っぽく見せるしかないだろ?」
「じゃあ、ちゃんと呼びますから」
「信用ならない」
「本当ですって! えっと、えっと、そ……壮志、さん?」
恥ずかしさに頬を染めながらチラリと視線を上げると、壮志は驚いたように目を見開いてから優しく微笑んだ。
そしてグッと優香の肩を抱く手に力を込める。
「……いい。想像以上にいい」
「え?」
「もう一回呼んでみて」
「えっと、壮志さん」
「なに? 優香」
甘い眼差しで見つめられ、優香は思わず視線をそらす。
「あの、呼べと言われたから呼んだまでで」
「やれやれ、ほんとに手強いな。どうやったら落ちてくれる?」
「何にですか?」
「俺に」
ボンッと優香の顔はまたもや真っ赤になった。
「ははっ、可愛いから許す。優香、まだ俺を好きでなくてもいいから、こうやってそばにいさせて」
コクリと頷くと壮志は目を細めて微笑み、優香の頭をそっと抱き寄せて「ありがとう」とささやいた。
まずは「水盤テラス」が象徴的なリゾートホテルへ行ってみる。
「すごい、湖の中にいるみたい」
ロビーを抜けた先に広がる円形のテラスは、まるでインフィニティプールのように芦ノ湖の水面と一体化し、座って周りを眺めると水に浮かんでいるような気がした。
「なんてきれいなの。自然の中に溶け込んだみたい」
ふいにカシャッと音がして振り返ると、壮志がスマートフォンから顔を上げる。
「いい写真が撮れた。これ、ロック画面にしてもいい?」
「ええ!? 私の写真をですか? だめです!」
「どうして? ほら、横顔がすごくきれいだ」
見せられた画面には、遠くの湖に目をやって微笑む優香の横顔と、青空の下で陽の光を受けて煌めく水面が捉えられていた。
「ね? いい写真だろ?」
「でもロック画面にするのはだめです。肖像権があるでしょ?」
「それを言われると困るな。じゃあ、こっそり見返すだけならいい?」
「まあ、こっそりなら」
「ありがとう。これでいつでも優香に会える」
嬉しそうに言われて、優香の顔は真っ赤に火照った。
「ん? 何、照れてるの?」
「てっ、照れてません。その、名前を呼ばれるのに慣れてなくて……」
「可愛いな。じゃあ早く慣れるようにたくさん呼ぼう」
そう言うと壮志は腕を伸ばし、優香の頭を抱き寄せて耳元で「優香」とささやいた。
優香はもう顔から火が出そうになる。
「あの、古賀様。おやめください」
途端に壮志は、モアイ像のような顔になった。
「ちょっと、その呼び方どうにかならない?」
「どうにか、とは?」
「ここは職場じゃないんだから、名字じゃなくて名前で呼んで」
でも、と優香は戸惑う。
「うっかり『マリナ・ヴィスタ』で、お名前を呼んでしまってはいけませんから」
「けど、『古賀様』なんて呼ばれたら、周りの人にパパ活と間違われそうだ」
「パパ活!? まさかそんな。私、24ですよ?」
「俺とは8才も違う。これでも気にしてるんだ、君との年の差を」
「そんなこと気にしなくても……」
そう言ってから優香はふと疑問に思った。
「パパ活って、犯罪なんですか?」
「相手が未成年ならね。会ってお小遣いを渡したり食事をしただけでも、刑法224条の『未成年者誘拐罪』に該当するおそれがある」
「えっ、誘拐?」
「そう。甘い言葉で相手をそそのかす誘惑も、法律上は誘拐とみなされるんだ」
「強引に連れ去った訳ではなくても?」
「ああ。たとえ相手の同意があっても、未成年ならそれは無効。未成年者誘拐罪は、保護者の監護権を守るための法律でもあるからね。保護者の許可がなければ監護権の侵害となって、犯罪が成立する。この罪には罰金刑がないから、起訴されれば執行猶予がつかない限り刑務所へ行くことになる」
そうなのですね、と優香は神妙に頷いた。
「という訳で『古賀様』呼びはやめて。イリーガルな関係を疑われては困る」
「わかりました。それでは、えっと……古賀さんで」
ガクッと壮志は首を折る。
「どこが違うんだよ?」
「全然違いますよ。フランクになったでしょ?」
「なってない! ったくもう」
壮志は強引に優香の肩を抱き寄せた。
「え? あの」
「名前で呼んでくれないなら、見た目で恋人っぽく見せるしかないだろ?」
「じゃあ、ちゃんと呼びますから」
「信用ならない」
「本当ですって! えっと、えっと、そ……壮志、さん?」
恥ずかしさに頬を染めながらチラリと視線を上げると、壮志は驚いたように目を見開いてから優しく微笑んだ。
そしてグッと優香の肩を抱く手に力を込める。
「……いい。想像以上にいい」
「え?」
「もう一回呼んでみて」
「えっと、壮志さん」
「なに? 優香」
甘い眼差しで見つめられ、優香は思わず視線をそらす。
「あの、呼べと言われたから呼んだまでで」
「やれやれ、ほんとに手強いな。どうやったら落ちてくれる?」
「何にですか?」
「俺に」
ボンッと優香の顔はまたもや真っ赤になった。
「ははっ、可愛いから許す。優香、まだ俺を好きでなくてもいいから、こうやってそばにいさせて」
コクリと頷くと壮志は目を細めて微笑み、優香の頭をそっと抱き寄せて「ありがとう」とささやいた。