まだ青い彼
 「あーあ、ぱっと良い人が現れないかな」

 店を出ると、伸びをしながら仁香は言った。

「ははは、わかんないよ。あるかもよ」

 私もそう返す。わかんないよ、来年は仁香もあの時はあんなに焦ってたのにねーなんて笑っているかもしれない。そのためにまだ婚活をするのだから。

「そうそう、わかんないものだよ。ぱっと急に結婚する人って案外いるし。結婚なんてしたくないほど他の事に夢中になるかもしれないし」
 昌代が仁香を励ますように言った。

「何でか結婚焦ってない昌代が一番結婚に近い位置にいるのが腹立つぅ。でもそうなんだろうな、焦りが一番遠回りな気がする」
「そうそう、それはあるかもね。見えるものも見えなくなっちゃうから」

 生ぬるくなった風を受けながら少し遠回りして帰ろっか、と3人で歩く。

「そうだねー。焦っちゃダメだよね」
 私も同意した。

「春美も、その子との事は遠回りしてそうで結婚に一番近い道な気がする。この時間があったからこそあとで後悔しないかもしれないってこと。あんまり悩まないようにね」
 昌代がそう言ってくれて頷く。
 結婚はしたいけど私にはどこか他人事で、自分が結婚出来るなんて今は夢のまた夢な気がする。
 やれることをするしかないんだけど。

 「既に信頼関係が確立しているちょうどいい年齢の独身男性がパッと目の前に現れたらいいのにね。そしたらなーんにも悩まずにさっと解決しちゃうのに」
 仁香が笑う。
「もー、そんなうまい話、あるわけないでしょ」

 私もそう言って笑った。
 この友情も大人になるにつれて変化しつつも維持されている。楽しい時間だった。

 そんなうまい話はあるわけない。わかっているけど慰めになった。
「またお互いの近況報告兼ねて集まろうね。希美も会いたいし」
「うん、そうだね」
「あ、そうそう、春美。夜寝る前のベッドで結婚について考えない方がいいよ、不安で泣けて来るから。夜のテンションなだけだからね」

 仁香のアドバイスはその通り過ぎて笑ってしまった。もう、泣いたわよ。
 軽い足取りで戦友と別れた。
 
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