未完成のワンフレーズ


まさか。


そんなわけ――。




「……」




男の子が、ギターを抱え直した。


俯いているせいで顔はよく見えない。


だけど、その横顔。

その髪。

その雰囲気。



間違えるはずがなかった。




「……昨日の……」




思わず、声が漏れる。



その瞬間。




「誰?」




男の子が顔を上げて、真っ直ぐと私を見た。




「…………っ」




薄暗い歩道橋の上で睨まれた、あの目に見られている。

間違いない。


あの目は、確かにあの時に向けられたもの。



「お前……」




少年の目が大きく見開かれる。




「昨日の、下手って言った奴」

「……っ!」



やっぱり、こいつだ――。



「何しに来た」


抱えていたギターをケースに仕舞って、

少年はベッドから降りると軽い足取りで私に近づく。


ずいっと近づけられた顔は、私とほとんど同じ目線。


それなのに、ずっと上から睨まれているような威圧感があった。



「俺のギターは下手なんだろ。聞くだけ時間の無駄じゃねぇのか」

「え、あっ、いや⋯⋯聞きに来たわけじゃ」

「じゃあ、んなとこで突っ立ってんじゃねぇ」



さっさとどっかに行け――。

少年はそう言いながら、乱暴に病室の扉を閉めてしまった。



「いや⋯⋯」



閉め出された私。

一人取り残された私。



「どーーーーーいう扱いじゃボケェーーーーーーー!!!!!!!」



きっと普通の子はここで泣いたり、

困惑したり、


はたまた諦めで何処かに行ったりしたりするのだろうけど。



あいにく私は“普通じゃない”ので。



ここで言われたまま逃げ出すなんていう選択肢はないのです。
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