再会した冷徹上司は、私にだけ過保護です

番外編 夏のそれがし編集部

「――っくしゅ」

「大丈夫か?」

 私が努めて小さくくしゃみをしても、冬馬先輩はすぐに気付いてしまう。
 それが嬉しくもあり、少しだけ困ってしまうところでもある。

「あ、大丈夫です! 編集部、クーラー効いてますね」

 瞬間、私の肩に、ふぁさ……と何かがかかった。

「……着ていろ」

 先輩の、スーツの上着。

「あ、そんな、申し訳ないです! カーディガン持ってきてるので……」

「いいから」

「……えへへ。ありがとうございます」

 先輩、相変わらず優しいなあ。
 照れくさく思いながら笑いかけると、彼も目を細めていた。

「俺の手袋もつけるか? ココア入れるか?」

「いや本当にそこまでしなくても……」

「少し待っていろ。確か仮眠室にひざ掛けが――」

「ちょい、氷室ちゃん」

 田島さんが声をかけると、「……なんだ?」と先輩が怪訝な顔をする。

「今、お前にかかずらっている暇はないのだが」

「いやいやいや、小日向ちゃん、夏の我慢大会みたいになっちゃうから」

 たしかに……。
 肩には先輩の上着をかけられ、手には黒い手袋、デスクには湯気の上がったココアがある。
 およそ、夏の装いではない。

「氷室、アンタ過保護も大概にしなさいよ」

 犀川さんの言葉で、編集部は笑いに包まれた。
 ……でも、安心したなあ。
 冬馬先輩、みんなに笑って受け入れられるようになって。
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