海から届いたお守り
海から始まった幸せ
結婚することを家族に伝えてから、二人は少しずつウエディングフォトの準備を始めていた。
ある日の夕方、樹が凪沙に言った。
「なあ、凪沙」
「ん?」
「ウエディングフォト、撮らん?」
「ウエディングフォト?」
「うん。結婚式をするかどうかは、これからゆっくり考えればいいけど、二人の今を写真に残したいんよ」
凪沙は少し照れながら笑った。
「……撮りたい」
「ほんと?」
「うん。樹と一緒なら撮りたい」
「よかった」
樹は嬉しそうに笑った。
そして樹は、凪沙のために何か特別なものを作りたいと思った。
そこで思いついたのが、海のシーグラスで作るティアラだった。
でも、ティアラの作り方はよく分からない。
樹は自分のお母さんに相談した。
「お母さん、シーグラスでティアラ作りたいんやけど、どうやったらいい?」
「シーグラスでティアラ?」
「うん。凪沙のウエディングフォトで使ってもらいたい」
お母さんは少し考えてから、懐かしそうに笑った。
「樹、昔のこと覚えちょる?」
「昔?」
「小学生の頃、野津原の少年自然の家に行ったときのこと」
「あ……」
樹は思い出した。
あのとき、凪沙からシーグラスをもらった。
そのシーグラスを大切に持ち帰って、お母さんに教えてもらいながらネックレスを作った。
「凪沙からもらったやつや」
「そうそう」
「俺、あのネックレス、今でも持っちょるよ」
「そうやったなぁ」
そのネックレスは、凪沙にプレゼントしたものではなかった。
樹自身が、ずっとお守りとして大切に持っていた。
凪沙からもらったシーグラス。
小学生の頃に自分で作ったネックレス。
それは樹にとって、大切な思い出だった。
お母さんは樹を見ながら、嬉しそうに笑った。
「小学生のときは、自分のお守りを作ったのに、今度は可愛いお嫁ちゃんのためにティアラを作るんやな」
「……お嫁ちゃんって言うなよ。恥ずかしいやん」
「何で? 結婚するんやろ?」
お母さんは笑った。
「ほら、びしばし教えるけん」
「びしばし?」
「そう。凪沙に渡すんやけん、ちゃんと可愛く作らんとな」
「お願いします……」
こうして、樹とお母さんのティアラ作りが始まった。
二人で海へ行き、シーグラスを一つずつ集めた。
青、水色、透明、白、淡い緑。
「これ、凪沙に似合いそう」
「こっちはどう?」
「いいね。でも、もうちょっと小さいのも欲しいな」
家に帰ってからも、二人でシーグラスの大きさや色を見ながら、ティアラの形を考えた。
「そこ、もうちょっとこっち」
「こう?」
「そうそう。もう少しバランス考えて」
「お母さん、ほんとびしばしやな」
「当たり前やろ。可愛いお嫁ちゃんのためなんやけん」
樹は苦笑しながらも、一生懸命作った。
何日もかけて、少しずつ形を整えていく。
そして、ようやく完成した。
淡い青や透明のシーグラスが並んだ、小さなティアラ。
海の光をそのまま閉じ込めたような、優しい色合いだった。
そして、ウエディングフォトの日。
凪沙は白いドレスに身を包んで現れた。
「樹……どう?」
樹は一瞬、言葉を失った。
「……めちゃくちゃ綺麗」
凪沙は照れながら笑った。
「ありがとう」
すると樹は、小さな箱を取り出した。
「凪沙、これ」
「何?」
箱を開けた凪沙は、驚いて目を丸くした。
「……シーグラス?」
「うん。ティアラ」
「樹が作ったん?」
「俺とお母さんで作った」
凪沙はティアラをそっと手に取った。
「……綺麗」
「海の色みたいやろ?」
「うん」
樹がそっとティアラを凪沙の髪に乗せる。
シーグラスが光を受けて、きらきらと輝いた。
「似合う?」
樹は笑った。
「うん。めちゃくちゃ似合う」
そのとき、樹はもう一つ、大切なものを取り出した。
昔のシーグラスのネックレスだった。
凪沙が見た瞬間、すぐに分かった。
「これ……」
「野津原の少年自然の家で、凪沙が俺にくれたシーグラスで作ったやつ」
「まだ持っちょったん?」
「うん。ずっとお守りにしちょった」
凪沙は懐かしそうにネックレスを見つめた。
「小学生のときのやつやね」
「そう」
「ずっと大事にしちょったんや」
「そりゃそうやろ。凪沙からもらったものやけん」
凪沙の目に涙が浮かんだ。
「……ありがとう」
「今度は俺から、凪沙にティアラ」
樹は優しく笑った。
「これからも一緒におろうな」
「うん」
二人は海を背景に並んだ。
少し離れたところでは、じいちゃん、お父さん、お母さんも二人を見守っていた。
じいちゃんが嬉しそうに笑う。
「ほんと、幸せそうやなぁ」
母さんも笑った。
「小さい頃からずっと一緒やったもんね」
お父さんも二人を見ながら、静かに頷いた。
「これからも二人で支え合っていけばいい」
カメラのシャッターが切られる。
そこに写ったのは、海を背景に笑う二人。
凪沙の髪には、樹とお母さんが心を込めて作ったシーグラスのティアラ。
そして樹の手には、小学生の頃からずっと大切にしてきたシーグラスのネックレス。
昔、凪沙からもらった小さなシーグラスが、樹のお守りになった。
そして大人になった今、その海の思い出は、凪沙のウエディングティアラへと形を変えた。
そのあと、二人はじいちゃん、お父さん、樹のお母さんの前に立った。
樹が凪沙の手を握る。
凪沙も、しっかりと握り返した。
凪沙が三人を見つめる。
「じいちゃん、お父さん、樹のお母さん」
三人が二人を見る。
「これからも、私たち二人をよろしくお願いします」
樹も頭を下げた。
「これからは、凪沙と二人で支え合っていきます。これからも親戚同士、仲良くしていってください」
じいちゃんは嬉しそうに笑った。
「何言いよるんか。これからも家族じゃろうが」
樹のお母さんも笑顔で頷いた。
「こちらこそ、これからもよろしくね」
お父さんも二人を見つめて、優しく笑った。
「凪沙、樹。これからも二人で仲良くやっていけよ」
「うん、お父さん」
「ありがとうございます、竜樹さん」
みんなで顔を見合わせる。
そして、自然と笑い声が広がった。
二人は、楽しいことだけを歩いてきたわけじゃない。
苦しい日もあった。
悩んだ日もあった。
凪沙が体調を崩した日もあった。
それでも、そのたびに周りの人に支えてもらいながら、ここまで歩いてきた。
これからも、きっと大変な日がある。
でも、そんな日は一人で抱えなくていい。
二人で支え合って、家族にも頼りながら、一歩ずつ進んでいけばいい。
「凪沙」
「ん?」
「幸せやな」
凪沙は海を見ながら笑った。
「うん。幸せ」
二人は手を繋いだ。
青い海。
優しい風。
そして、髪の上で輝くシーグラスのティアラ。
昔から続いてきた二人の思い出は、これから始まる新しい人生へと繋がっていく。
樹と凪沙は、じいちゃん、お父さん、樹のお母さんに見守られながら、笑顔で歩き出した。
二人の幸せは、これからもずっと続いていく。
――おしまい。
ある日の夕方、樹が凪沙に言った。
「なあ、凪沙」
「ん?」
「ウエディングフォト、撮らん?」
「ウエディングフォト?」
「うん。結婚式をするかどうかは、これからゆっくり考えればいいけど、二人の今を写真に残したいんよ」
凪沙は少し照れながら笑った。
「……撮りたい」
「ほんと?」
「うん。樹と一緒なら撮りたい」
「よかった」
樹は嬉しそうに笑った。
そして樹は、凪沙のために何か特別なものを作りたいと思った。
そこで思いついたのが、海のシーグラスで作るティアラだった。
でも、ティアラの作り方はよく分からない。
樹は自分のお母さんに相談した。
「お母さん、シーグラスでティアラ作りたいんやけど、どうやったらいい?」
「シーグラスでティアラ?」
「うん。凪沙のウエディングフォトで使ってもらいたい」
お母さんは少し考えてから、懐かしそうに笑った。
「樹、昔のこと覚えちょる?」
「昔?」
「小学生の頃、野津原の少年自然の家に行ったときのこと」
「あ……」
樹は思い出した。
あのとき、凪沙からシーグラスをもらった。
そのシーグラスを大切に持ち帰って、お母さんに教えてもらいながらネックレスを作った。
「凪沙からもらったやつや」
「そうそう」
「俺、あのネックレス、今でも持っちょるよ」
「そうやったなぁ」
そのネックレスは、凪沙にプレゼントしたものではなかった。
樹自身が、ずっとお守りとして大切に持っていた。
凪沙からもらったシーグラス。
小学生の頃に自分で作ったネックレス。
それは樹にとって、大切な思い出だった。
お母さんは樹を見ながら、嬉しそうに笑った。
「小学生のときは、自分のお守りを作ったのに、今度は可愛いお嫁ちゃんのためにティアラを作るんやな」
「……お嫁ちゃんって言うなよ。恥ずかしいやん」
「何で? 結婚するんやろ?」
お母さんは笑った。
「ほら、びしばし教えるけん」
「びしばし?」
「そう。凪沙に渡すんやけん、ちゃんと可愛く作らんとな」
「お願いします……」
こうして、樹とお母さんのティアラ作りが始まった。
二人で海へ行き、シーグラスを一つずつ集めた。
青、水色、透明、白、淡い緑。
「これ、凪沙に似合いそう」
「こっちはどう?」
「いいね。でも、もうちょっと小さいのも欲しいな」
家に帰ってからも、二人でシーグラスの大きさや色を見ながら、ティアラの形を考えた。
「そこ、もうちょっとこっち」
「こう?」
「そうそう。もう少しバランス考えて」
「お母さん、ほんとびしばしやな」
「当たり前やろ。可愛いお嫁ちゃんのためなんやけん」
樹は苦笑しながらも、一生懸命作った。
何日もかけて、少しずつ形を整えていく。
そして、ようやく完成した。
淡い青や透明のシーグラスが並んだ、小さなティアラ。
海の光をそのまま閉じ込めたような、優しい色合いだった。
そして、ウエディングフォトの日。
凪沙は白いドレスに身を包んで現れた。
「樹……どう?」
樹は一瞬、言葉を失った。
「……めちゃくちゃ綺麗」
凪沙は照れながら笑った。
「ありがとう」
すると樹は、小さな箱を取り出した。
「凪沙、これ」
「何?」
箱を開けた凪沙は、驚いて目を丸くした。
「……シーグラス?」
「うん。ティアラ」
「樹が作ったん?」
「俺とお母さんで作った」
凪沙はティアラをそっと手に取った。
「……綺麗」
「海の色みたいやろ?」
「うん」
樹がそっとティアラを凪沙の髪に乗せる。
シーグラスが光を受けて、きらきらと輝いた。
「似合う?」
樹は笑った。
「うん。めちゃくちゃ似合う」
そのとき、樹はもう一つ、大切なものを取り出した。
昔のシーグラスのネックレスだった。
凪沙が見た瞬間、すぐに分かった。
「これ……」
「野津原の少年自然の家で、凪沙が俺にくれたシーグラスで作ったやつ」
「まだ持っちょったん?」
「うん。ずっとお守りにしちょった」
凪沙は懐かしそうにネックレスを見つめた。
「小学生のときのやつやね」
「そう」
「ずっと大事にしちょったんや」
「そりゃそうやろ。凪沙からもらったものやけん」
凪沙の目に涙が浮かんだ。
「……ありがとう」
「今度は俺から、凪沙にティアラ」
樹は優しく笑った。
「これからも一緒におろうな」
「うん」
二人は海を背景に並んだ。
少し離れたところでは、じいちゃん、お父さん、お母さんも二人を見守っていた。
じいちゃんが嬉しそうに笑う。
「ほんと、幸せそうやなぁ」
母さんも笑った。
「小さい頃からずっと一緒やったもんね」
お父さんも二人を見ながら、静かに頷いた。
「これからも二人で支え合っていけばいい」
カメラのシャッターが切られる。
そこに写ったのは、海を背景に笑う二人。
凪沙の髪には、樹とお母さんが心を込めて作ったシーグラスのティアラ。
そして樹の手には、小学生の頃からずっと大切にしてきたシーグラスのネックレス。
昔、凪沙からもらった小さなシーグラスが、樹のお守りになった。
そして大人になった今、その海の思い出は、凪沙のウエディングティアラへと形を変えた。
そのあと、二人はじいちゃん、お父さん、樹のお母さんの前に立った。
樹が凪沙の手を握る。
凪沙も、しっかりと握り返した。
凪沙が三人を見つめる。
「じいちゃん、お父さん、樹のお母さん」
三人が二人を見る。
「これからも、私たち二人をよろしくお願いします」
樹も頭を下げた。
「これからは、凪沙と二人で支え合っていきます。これからも親戚同士、仲良くしていってください」
じいちゃんは嬉しそうに笑った。
「何言いよるんか。これからも家族じゃろうが」
樹のお母さんも笑顔で頷いた。
「こちらこそ、これからもよろしくね」
お父さんも二人を見つめて、優しく笑った。
「凪沙、樹。これからも二人で仲良くやっていけよ」
「うん、お父さん」
「ありがとうございます、竜樹さん」
みんなで顔を見合わせる。
そして、自然と笑い声が広がった。
二人は、楽しいことだけを歩いてきたわけじゃない。
苦しい日もあった。
悩んだ日もあった。
凪沙が体調を崩した日もあった。
それでも、そのたびに周りの人に支えてもらいながら、ここまで歩いてきた。
これからも、きっと大変な日がある。
でも、そんな日は一人で抱えなくていい。
二人で支え合って、家族にも頼りながら、一歩ずつ進んでいけばいい。
「凪沙」
「ん?」
「幸せやな」
凪沙は海を見ながら笑った。
「うん。幸せ」
二人は手を繋いだ。
青い海。
優しい風。
そして、髪の上で輝くシーグラスのティアラ。
昔から続いてきた二人の思い出は、これから始まる新しい人生へと繋がっていく。
樹と凪沙は、じいちゃん、お父さん、樹のお母さんに見守られながら、笑顔で歩き出した。
二人の幸せは、これからもずっと続いていく。
――おしまい。
