愛される星

私はそこで立ち止まってしまった。


中から出て来たのは、昨日の女の人だったから。


「お願いだから、きちんと考えて欲しいの。」


華奢な声。


「ああ。」


凌の声だ。


私の胸はもうドクンともならなかった。


さっきまでざわついていた胸が、予感が、
「ほらね」と言ったような気がした。


一気に力が抜けちゃって、林檎の袋ごと地面に滑り落ちた。


林檎は砕けながら、地面でコロコロ遊ぶように転がり、その中の一つが目の前の二人にはしゃぎ遊ぶようにたどり着いた。



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