美味しく召し上がれ


泉宮くんと初めて話したのは、入学式の日である。

式が終わり一年一組の教室に行って、担任になる涼風先生の話が終わって、少しの自由時間に泉宮くんは、椎奈さんを含む女子達に囲まれていた。

内容は新入生代表の挨拶良かったよ、とかだったと思う。

口振からして、同じ中学なんだと。

泉宮くんの前の席の明石くんは、居心地が悪そうだった。


女子に囲まれるのが慣れてるらしく、笑顔で対応していた。

ファンサービスをするアイドルと、熱狂的なファンみたいだなぁと、見てると目が合った。

泉宮くんは小首を傾げる仕草をして、言葉には出さずに目だけで、何?という表情を浮かべた。

怖い人だと思った。

……表情ひとつで、人の心臓を止めそうで。


私は見てたのがバレたのが恥ずかしくて、顔に熱が集まり赤くなったのが自分で分かった。

「入夏さん、だよね?」

帰りの準備をしてると、そう話し掛けられた。


「……入夏です。」

「合ってた。泉宮葵です。席が近いし、仲良くしようね。」

手を差し出されたが私には、今日、初めて会った人の手を握るのはハードルが高く、ただそれを見つめた。

「ごめん、癖で。」

私の反応を警戒と取ったのか、泉宮くんは手を引っ込めた。

「海外に住んでた事があるの……?」

握手をする習慣のある人なのでは。

「うん。親の関係で。入夏さん、海外のご経験は?」

泉宮くんは冗談めかして、片方の眉を上げた。

そんな表情も魅力的だった。

チャーミングって、言葉が合う。

「全く。飛行機にも乗った事ない。」

私は首を振った。

「そうなんだね。これからの新しい体験、楽しみが沢山あって良いね。」

「……泉宮くんって、素敵な考え方をするんだね。」

泉宮くんは微かに、目を見開いた。

「ありがとう。褒められると、照れるね。」

全く、照れてなさそうだった。


泉宮くんの考え方、物事の捉え方には余裕が感じられた。

新入生代表挨拶で、登壇した姿を見た時も思ったが、立ち振る舞いが堂々としていてノイズがない。

スピーチは原稿が用意してあるとはいえ、緊張するもの。

髪や顔を触ったり、えー、とかあー、とか挟みがちだ。

声のトーンもスピードも、訓練されてるのでは。

格が違う。

とっつき難いと思いきや、話しやすくてユーモアがあった。


海外マウント取りがちな人が多いのに、泉宮くんは違った。

英語が話せるのはすごいと思う。

中学の時にやたらと話し掛けて来て、鬱陶しい同級生がいた。

海外に親が持つ別荘があるから、遊びに来いよと、しつこく誘って来たやつが。

行くわけねぇだろ。


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