攻略対象の想い人は、ナレ死予定の転生聖女 欠損を肩代わりしたら、なぜか曇った三英雄が執着してくるのですが?
「無能と蔑んできた聖女に庇われ、同情されているんだぞ!? これが屈辱でなければ、なんだと言うんだ!」
「申し訳、ありません…………」
「心の底からそう思っているのなら、君が引き取った左目の傷を僕に戻してくれ」
「それは、できません」
「嘘をつくな!」

 一度本性を表してしまった以上、取り繕う必要はないと考えたのだろう。
 彼は痛いくらいに繋いだ指先を握りしめ、「僕の言う通りにしろ」と凄む。

「やろうと思えば、できるだろう!?」
「それでは、意味がないのです」
「僕に一生、惨めな気持ちのままでいろと言うのか!? 大嫌いな人間に守られたなんて……。父上に知られたら、どう思われるか……」

 殿下の怒りは、静まるどころかどんどんと強まっている。
 このまま2人きりでいたら、いつ暴力を振るわれるかわかったものではなかった。

 ――この場にいるのがヒロインならきっと、持ち前の明るさで弱った彼の心を掬い上げるのだろう。

 だけど、私は彼女とは真逆の性格をした人間だ。
 気の利いたことを言えない代わりに、誠意を払って接するしかなかった。
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