図書室の恋だより〜君とこの先もページをめくりたい〜

第19話 栞と国枝くん



国枝くんはどこか苦い表情を浮かべながら、意を決したように続けた。



「西本さんに、謝らなきゃいけないことがあって」



ーーえっ?



思いがけない言葉だった。



「謝らなきゃいけないこと?」



私は聞き返した。



何かあったかな。


心当たりがなくて、私は首をひねった。



「覚えてないかな‥‥‥。

中三の、もうすぐ卒業っていう頃のこと。

教室でさー、俺が落としたペットボトルの水が、西本さんの本にかかってしまって」



「あ‥‥‥」



言われて思い出した。



あの時のことか‥‥‥。



確か、あの日は放課後。



私は教室の、自分の席に座っていた。



片付けをしようと、本を机の上に置いた。



隣では男子たちが何人か集まって話をしていたと思う。


そのうちの一人がよろけて、その人が持っていたペットボトルが、私の机の上に落ちてしまった。



運悪く、ペットボトルの蓋は開いてて、私の机の上に水がこぼれる。



机の上にあった本はあっという間にーーわりと盛大にーー濡れてしまった。



その男子は、クラスメイトの国枝くんだった。


「あ、ごめん!」と言っていたのは覚えてる。



その直後、

「国枝、早くしろよ」

と、他の男子に呼ばれ、国枝くんは、

「本当にごめんね」

と言いながら、そのまま教室を出て行ってしまった。



もう一年以上前のことで、正直、国枝くんに言われるまで、すっかり忘れていた。



「で、でも。国枝くん、わざとじゃなかったし」
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