君の歌声に恋をした。天才作曲家と無自覚天然少女。
第一章 高校生になった朝、少女は小さな一歩を踏み出した
春の朝は、まだ少しだけ肌寒かった。
美梨花澪は、自分の部屋に差し込んできた柔らかな日差しをぼんやりと眺めながら、布団の中で小さく身じろぎした。
目覚まし時計はとっくに鳴り終わっているらしく、枕元に置いたスマートフォンの画面には、何件かの通知が表示されている。
「……んぅ……」
眠たい目をこすりながら上半身を起こし、澪はぼさぼさになった髪を手で整えた。
今日から高校一年生。
昨日までとは何もかもが少し違って見えるような気がして、制服が掛けられた部屋の隅を眺めているだけでも、胸の奥がふわふわと落
ち着かなかった。
鏡の前に立って、新しい制服に袖を通す。
中学校の頃より少し大人っぽくなったような気がするけれど、鏡に映った自分を見ると、
結局いつもの自分とそれほど変わっていない気もする。
胸元についた淡いピンク色のリボンを指先でそっと整えてから、澪は鏡の中の自分に向かって小さく笑った。
「……今日から高校生なんだ」
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