あなたをみてる
朝。
カーテンの隙間から差し込む光で、ゆかりは目を覚ました。
今日は奏と会う約束をしている。
昨日も会ったばかりなのに、また会える。
ゆかりはベッドから起き上がると、出かける準備を始めた。
支度を終え、ゆかりは家を出た。
玄関を閉め、いつものようにポストを開ける。
その手が止まった。
白い封筒が、一通。
ゆかりは封筒を手に取った。
宛名はない。
裏返しても、差出人の名前はない。
切手も消印もなかった。
「何これ、昨日、何も入ってなかったのに……」
昨夜、奏と別れて帰ってきたときにも、ポストを開けた。
そのときには、確かに何も入っていなかった。
ゆかりは白い封筒を見つめる。
そのとき、スマートフォンが鳴った。
突然の音に、ゆかりの肩が小さく跳ねる。
画面には奏の名前。
―ごめん! 寝坊した―
続けて、もう一通。
―一時間待って。すぐ行くから―
「もう……奏くん」
ゆかりは苦笑する。
―分かった。慌てなくていいよ―
そう返してから、手元の封筒を見る。
一時間。
ゆかりは白い封筒を持ったまま、部屋へ戻った。
白い封筒をテーブルに置く。
お湯を沸かし、紅茶を淹れた。
ティーカップから、白い湯気がゆっくり立ち上る。
ゆかりは椅子に座り、紅茶を一口飲んだ。
スマートフォンが震える。
―ほんとごめん―
―今、急いで準備してる―
ゆかりは小さく笑った。
―だから慌てなくていいって―
送信する。
ティーカップを手に取り、もう一口。
いつもと変わらない朝だった。
ただ一つ。
テーブルの上に置かれた、白い封筒を除いて。
ゆかりはカップを置いた。
「……誰からだろ」
封筒を手に取る。
表にも裏にも、何も書かれていない。
ゆかりは封を開けた。
中に指を入れる。
何かが入っている。
引き出してみると、一枚の写真だった。
その瞬間。
小さなカードが封筒から滑り落ちた。
床に落ちる。
けれど、ゆかりは気づかない。
写真を見たまま、動かなくなっていた。
「…………え?」
写真には、真司が写っていた。
そして、その前に立つ女。
ゆかりだった。
その手には、刃物。
真司へ向かって振り下ろしている。
そして、ゆかりは――
笑っていた。
「…………」
指先が震え始める。
写真が、かすかに揺れる。
「……なんで」
ゆかりの顔から血の気が引いていく。
「なんで……これが……」
誰もいなかった。
誰にも見られていない。
そう思っていた。
写真が手から滑り落ちた。
ゆかりは勢いよく窓を見る。
カーテンを開ける。
外を見る。
誰もいない。
「……誰?」
返事はない。
玄関を見る。
物音もしない。
「誰なの……?」
静まり返った部屋。
ゆかりは自分の身体を抱くように、腕を押さえた。
そのとき。
床に落ちているものに気づく。
写真の近く。
小さなカード。
さっき封筒から落ちたものだった。
ゆかりはゆっくりとしゃがむ。
震える指を伸ばす。
カードを拾った。
裏には、何も書かれていない。
ゆかりはカードを返す。
そして――
息を呑んだ。
そこには、たった一言だけ書かれていた。
あなたをみてる
カーテンの隙間から差し込む光で、ゆかりは目を覚ました。
今日は奏と会う約束をしている。
昨日も会ったばかりなのに、また会える。
ゆかりはベッドから起き上がると、出かける準備を始めた。
支度を終え、ゆかりは家を出た。
玄関を閉め、いつものようにポストを開ける。
その手が止まった。
白い封筒が、一通。
ゆかりは封筒を手に取った。
宛名はない。
裏返しても、差出人の名前はない。
切手も消印もなかった。
「何これ、昨日、何も入ってなかったのに……」
昨夜、奏と別れて帰ってきたときにも、ポストを開けた。
そのときには、確かに何も入っていなかった。
ゆかりは白い封筒を見つめる。
そのとき、スマートフォンが鳴った。
突然の音に、ゆかりの肩が小さく跳ねる。
画面には奏の名前。
―ごめん! 寝坊した―
続けて、もう一通。
―一時間待って。すぐ行くから―
「もう……奏くん」
ゆかりは苦笑する。
―分かった。慌てなくていいよ―
そう返してから、手元の封筒を見る。
一時間。
ゆかりは白い封筒を持ったまま、部屋へ戻った。
白い封筒をテーブルに置く。
お湯を沸かし、紅茶を淹れた。
ティーカップから、白い湯気がゆっくり立ち上る。
ゆかりは椅子に座り、紅茶を一口飲んだ。
スマートフォンが震える。
―ほんとごめん―
―今、急いで準備してる―
ゆかりは小さく笑った。
―だから慌てなくていいって―
送信する。
ティーカップを手に取り、もう一口。
いつもと変わらない朝だった。
ただ一つ。
テーブルの上に置かれた、白い封筒を除いて。
ゆかりはカップを置いた。
「……誰からだろ」
封筒を手に取る。
表にも裏にも、何も書かれていない。
ゆかりは封を開けた。
中に指を入れる。
何かが入っている。
引き出してみると、一枚の写真だった。
その瞬間。
小さなカードが封筒から滑り落ちた。
床に落ちる。
けれど、ゆかりは気づかない。
写真を見たまま、動かなくなっていた。
「…………え?」
写真には、真司が写っていた。
そして、その前に立つ女。
ゆかりだった。
その手には、刃物。
真司へ向かって振り下ろしている。
そして、ゆかりは――
笑っていた。
「…………」
指先が震え始める。
写真が、かすかに揺れる。
「……なんで」
ゆかりの顔から血の気が引いていく。
「なんで……これが……」
誰もいなかった。
誰にも見られていない。
そう思っていた。
写真が手から滑り落ちた。
ゆかりは勢いよく窓を見る。
カーテンを開ける。
外を見る。
誰もいない。
「……誰?」
返事はない。
玄関を見る。
物音もしない。
「誰なの……?」
静まり返った部屋。
ゆかりは自分の身体を抱くように、腕を押さえた。
そのとき。
床に落ちているものに気づく。
写真の近く。
小さなカード。
さっき封筒から落ちたものだった。
ゆかりはゆっくりとしゃがむ。
震える指を伸ばす。
カードを拾った。
裏には、何も書かれていない。
ゆかりはカードを返す。
そして――
息を呑んだ。
そこには、たった一言だけ書かれていた。
あなたをみてる