71歳の恋愛小説家
すべての相続手続きが済み、それぞれの名義に変更され、会社もすっきりと畳むことができた時には夫が急に亡くなってから一年以上も経っていた。
金型を作るための機械も引き取り先を探すのが大変だったが、宗さんが動いてくれて引き取り先を見つけて来てくれた。
引き取ってもらうだけで十分だと思ったのだが、お金も支払ってもらえた。
がらんとなった工場を見まわすと、ポツンと残されていた木の椅子を見つけて、急に今までのことが走馬灯のように頭を通り過ぎた。
独立して四十年。休憩して宗さんとお茶を飲んでお菓子を食べる時、いつもこの椅子に座っていたのを思い出した。
加奈子は、この一年忙しく動き回って夫の死にきちんと向き合っていなかったのだと痛感した。
目の奥が痛くなり涙が頬を伝って、この一年自分はきちんと夫の死を悼んでいなかったのではないかと、心を痛めた。
ひとしきり泣いて工場の中を見回すと、宗さんが使っていた椅子もその辺に転がっていた。
加奈子は宗さんの椅子と夫の椅子を並べておいて、お茶とお饅頭をそれぞれの椅子の上に置いた。
宗さんはまだ生きているけれど、夫の休憩に少し付き合ってもらおうと思ったのだ。
湯気の上がる湯飲み茶わんを見ていると、何やら図面を見ながら笑っている二人の顔が浮かんだ。
加奈子も自宅から丸椅子を持ってきて、一緒に三人で休憩した。
がらんとした工場の中でほっこりとした時間が流れて行った。
しばらくは何をする気も起きなくて、ただ漫然と日々をやり過ごしていた。
ありがたいことに友人たちはラインをくれたり、ランチに誘ってくれたりするので寂しいという事は感じなかった。
久しぶりの一人暮らしにほっとする気持もあったが、それにしても家がおおきすぎるし土地も広すぎる。
工場の建物も人が入らなければ、段々寂れてくるような気がする。
中庭に行くと聞こえてきた機械の音もなくシーンと静まり返っている。
この辺で人生をリセットするのに動き出さなくてはとまず、自分の棲家を見つける事にした。
金型を作るための機械も引き取り先を探すのが大変だったが、宗さんが動いてくれて引き取り先を見つけて来てくれた。
引き取ってもらうだけで十分だと思ったのだが、お金も支払ってもらえた。
がらんとなった工場を見まわすと、ポツンと残されていた木の椅子を見つけて、急に今までのことが走馬灯のように頭を通り過ぎた。
独立して四十年。休憩して宗さんとお茶を飲んでお菓子を食べる時、いつもこの椅子に座っていたのを思い出した。
加奈子は、この一年忙しく動き回って夫の死にきちんと向き合っていなかったのだと痛感した。
目の奥が痛くなり涙が頬を伝って、この一年自分はきちんと夫の死を悼んでいなかったのではないかと、心を痛めた。
ひとしきり泣いて工場の中を見回すと、宗さんが使っていた椅子もその辺に転がっていた。
加奈子は宗さんの椅子と夫の椅子を並べておいて、お茶とお饅頭をそれぞれの椅子の上に置いた。
宗さんはまだ生きているけれど、夫の休憩に少し付き合ってもらおうと思ったのだ。
湯気の上がる湯飲み茶わんを見ていると、何やら図面を見ながら笑っている二人の顔が浮かんだ。
加奈子も自宅から丸椅子を持ってきて、一緒に三人で休憩した。
がらんとした工場の中でほっこりとした時間が流れて行った。
しばらくは何をする気も起きなくて、ただ漫然と日々をやり過ごしていた。
ありがたいことに友人たちはラインをくれたり、ランチに誘ってくれたりするので寂しいという事は感じなかった。
久しぶりの一人暮らしにほっとする気持もあったが、それにしても家がおおきすぎるし土地も広すぎる。
工場の建物も人が入らなければ、段々寂れてくるような気がする。
中庭に行くと聞こえてきた機械の音もなくシーンと静まり返っている。
この辺で人生をリセットするのに動き出さなくてはとまず、自分の棲家を見つける事にした。