経営企画部の彼が半年間、彼女に連絡できなかった理由│Quiet Strength×Soft Strength2
「本当にごめん」

 と、完全に目を覚ました司はベッドで正座をしてそう言った。同じく正座をして向かい合う綾音はおろおろと首を横に振る。

「何も謝ることないよ? あたしが寝ようって言ったんだし、疲れていたんでしょ?」

「いや、それだけじゃなく…て…」

 しっかり睡眠を取ったことで記憶がはっきりと戻ってくる。そして落ち込むのを通り越して戦慄した。いや、昨日も分かってはいたんですけどね。その危機感がちゃんと認識できていなかったというか。だって急に連絡をして、あまつさえ部屋に来いだなんて言えるような状況じゃないでしょうがどう見ても。

 今年に入ってからほぼ初めての綾音。顔を合わせるどころか年明けてからこっち、碌に連絡もしていない。そのまま昨日までほったらかし。今は七月も終わりです。正気か俺。何やってるんだよ。放置したことも罪悪感も昨日の所業も何もかもあああああ…。もう言葉も出ない。

 その司に綾音が言う。

「司君。昨日、終わったって言ってたけど、お仕事一段落したの?」

「あ…う、うん」

 それは、うん。終わった。昨日の手応えが今になって確信的に自分の中に重く応えてくれる。全てがすっきり完結する仕事じゃない。でも一つの区切りは付いた。自分が目指していたのはそういう事だ。PBR1倍よりも、それを確実に目指せる会社になれば結果はきっと後から付いてくる。

 俺、全部できたんだ。それぞれがやるべき事を皆でできた。…改めて考えると凄いなあの会社。ぺーぺーにやらせてくれる仕事じゃないよ。

 でも、そんなことは綾音には関係ないことだ。大義名分があれば何をしても良い訳では無い。でも、綾音はまるでそれを認めてくれているかのように笑う。

「そっか。お疲れ様」

 優しく嬉しそうなその声は、疲れた体に染み込んでくる。

 いけないとは思いながらも今はそれに触れていたくて、司は「…うん」と、ただ頷いた。
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