経営企画部の彼が半年間、彼女に連絡できなかった理由│Quiet Strength×Soft Strength2
 じゃあね。と、会社のエントランスで二人はあっさり別れた。人はまだまばらで、二人に注目する目も無い。

 そして何の未練もない様子で先に進む司の後ろ姿を綾音は見送る。その立ち振る舞い。今朝のこと。昨日のこと。別に、仮に誰かに見られていても困ることのない程度の事なのに綾音の顔は真っ赤になった。司の気が逸れて我に返ったとも言う。

 ど、どうしよう。とにかく今日一日、しっかり集中して乗り切らなきゃ。綾音はぷるぷると小さく首を振って司とは別の方向に歩き出した。



「おはようございます」

 と、聞こえてきた声に、部屋の全員が顔を上げた。

「…おはよう」

「おはよう…」

 と、そわそわとした声が返ってくる。けれど昨日までと世界の解像度がまるで違う司は気付くこともなく席に着いた。

 さて。

 やるか。と、パソコンに電源を入れて、ついでに自分にもスイッチを入れる。昨日まで入りっぱなしだったスイッチは、一度切っても、いとも簡単にオンになった。

 けれどログインパスワードを入れる僅かな間に、あれをやってこれをやって、あー、あっちも気になるなと考えていて気が付く。頭が物凄く冴えてる。昨日まで、ごちゃごちゃに積み重なっていた数字もいつの間にか綺麗に整頓されている。凄く調子が良い。

 やっぱり休息は必要なんだな。パフォーマンスが変わる。そんな事を思いながら宙を見た司を部の全員が注目していたなんて司は全然気付かない。そのまま、自分でも驚くくらいの早さで仕事を処理し始めた。
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