弁護士さん、恋愛の仕方がわかりません
そして──冒頭に戻る。

緑色の文字で書かれているのは『婚姻届』。

「夫になる人」の欄には、高嶺秀一の名前が綺麗な字で記入されている。

「あの…?」
「こちらにぜひ、署名捺印をお願いします」

な ん で す っ て ?

「待ってください!私、誰と結婚するんですか?」
「?僕とですが」

何か問題でも?と言いたげな表情で私を見ている彼──高嶺さん。

どう考えても問題しかありませんけど?!

「いやいや、私の名前だって知りませんよね!?」
「名札から苗字が田中さんだということだけは…」
「それ知ってるの範囲に入らないと思いますよ!?」

最近ローマ字表記になった名札には「Tanaka」と書かれてある。
ちなみに私以外にもタナカさんは三人いる。

高嶺さんは「これから知っていけば問題ありません」なんて言っていて、もう何が何やらわからない。

とりあえず、この弁護士さんがとんでもない人だということだけはわかった。

「詳しいことは後でゆっくりと議論しましょう。明日、朝イチでの提出を検討していますので、さあ…」

そっと万年筆を差し出される。

私は反射的にそれを両手で押し返した。
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