マッチングした相手は片想いの社長でした
部屋が近づくにつれて、なぜか心臓が落ち着かなくなってくる。

「涼太君……」

私が名前を呼ぶと、涼太君が振り返った。

そして私が何を心配しているのか察したように、少し笑う。

「何もしないから」

「……うん」

涼太君は部屋の前で立ち止まった。

カードキーを取り出し、ドアのロックへ近づける。

ピッ――。

小さな電子音が、静かな廊下に響いた。

鍵が開く。

その音を聞きながら、私はなぜか胸騒ぎを覚えていた。

ただの出張だったはずなのに。

ただの同期だったはずなのに。

 ――今夜、私は涼太君と二人きりで、この部屋に泊まる。
< 149 / 295 >

この作品をシェア

pagetop