大好きな彼の裏の顔。
「……お着替え、ご用意いたします。」

「そおかなぁ…でもきっといるよ!」

ワゴンを押す手が止まり、楓が天井を仰いだ。長い指先がこめかみを押さえている。

「……いる、ね。」

深くため息をつく。それから姿勢を正した楓の顔には、どこか挑発的な笑みが浮かんでいた。

「じゃあ聞くけど、どういうシチュエーションがいいの。壁ドン? 顎クイ? 雨の中で偶然再会?」

ワゴンから離れ、ゆあの椅子の背もたれに片手をつく。座っているゆあを見下ろす形になり、身長差が嫌というほど際立つ。深い赤の瞳が、試すように据わっている。
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