天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「実家では邪魔が入るからな。しばらくここにいてもらう」
まったく答えになっていない返事をすると、郷一郎は藍衣のよく知る顔でにっこりと笑った。
「お前に政略結婚を命じた忌ま忌ましい祖父が亡くなって、私は心から安堵しているんだ。今後は父である私が、藍衣に相応しい夫を探してやろう」
藍衣はごくりと息を呑む。
縁談については以前から話に挙がっていたが、すでにいる婚約者のもとから攫ってまで別の男と縁談させようというのは、異常としか言えない。
「お父様。私、黎士さんと結婚したいと思ってる」
「なにを言っているんだ、あの男は仇だとさんざん教えただろう! 綺麗な顔の裏で酷いことを山ほどしているんだ」
「そんなことない!」
強い口調で否定する。『あなたが目で見たものを信じなさい』――一葉からもらった助言が背中を押した。
「私は黎士さんを愛してる。この数カ月で、彼の素敵なところをたくさん見つけたの。それに、お父様には言ってなかったと思うけれど、私、記憶を失う前は黎士さんとお付き合いしていて――」
そう説明したとき、突然、郷一郎が血相を変えてソファから立ち上がった。
「黙れ!!」
まったく答えになっていない返事をすると、郷一郎は藍衣のよく知る顔でにっこりと笑った。
「お前に政略結婚を命じた忌ま忌ましい祖父が亡くなって、私は心から安堵しているんだ。今後は父である私が、藍衣に相応しい夫を探してやろう」
藍衣はごくりと息を呑む。
縁談については以前から話に挙がっていたが、すでにいる婚約者のもとから攫ってまで別の男と縁談させようというのは、異常としか言えない。
「お父様。私、黎士さんと結婚したいと思ってる」
「なにを言っているんだ、あの男は仇だとさんざん教えただろう! 綺麗な顔の裏で酷いことを山ほどしているんだ」
「そんなことない!」
強い口調で否定する。『あなたが目で見たものを信じなさい』――一葉からもらった助言が背中を押した。
「私は黎士さんを愛してる。この数カ月で、彼の素敵なところをたくさん見つけたの。それに、お父様には言ってなかったと思うけれど、私、記憶を失う前は黎士さんとお付き合いしていて――」
そう説明したとき、突然、郷一郎が血相を変えてソファから立ち上がった。
「黙れ!!」