天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「それはまた、随分湾曲した心配の仕方ですね」

(ちょっとわかる気がするけど)

黎士は優秀な外科医で、彼にしか執刀できない手術もある。それを、料理をして怪我をしたから執刀できないなんて言われたら、患者も病院も大迷惑だ。

……と厳しい意見になるのは、藍衣が以前、医療コンシェルジュを務めていたからだろう。

とはいえ、彼自身を心配していないと言い切るのは、よほど冷たい人間か、よほど親しい人物か。

友人か、あるいは恋人か。

(……いや、恋人だったら、さすがにそんな辛辣な言い方はしないでしょう)

ひとりで納得して野菜を切り進める。

「その人、きっとツンデレなんだ。たぶん俺のことを心配しているのに、素直にそう言ってくれない」

悲しそうにため息をつく彼。これは愚痴だろうか? 

(ツンデレ……)

なんだかゾッと寒気がしたのは気のせいだろうか。空調が強いのかな?と思わず天井を見上げる。

「……藍衣も、俺は料理をしない方がいいと思う?」

「そう……ですね。向き不向きは誰にでもありますし、無理をする必要はないのでは」

「わかった。藍衣に心配かけるくらいなら、なるべく包丁は握らないようにする」

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