夫婦喧嘩する二人
「だめ。」
明くんと、クラシックコンサートに行くと話すとそう、葵くんから言われた。
「なんで?」
どうして、私の楽しみを奪うのか。
「光と紫はどうするの?俺は休み、取れないよ?」
「……お母さんに任せるもん。」
「お義母さん、休みの日くらい、ゆっくりしたいんじゃない?」
「二人の顔を見るだけで、疲れが取れるって、言ってた。」
お母さんは、外資系企業でバリバリ働くキャリアウーマンである。
「心はそうでも、体は休息を欲してると思うよ。」
「……。」
光は幼稚園に通い出してから、活発になり元気過ぎるところが……。
紫はまだ目が離せないから、注意が必要。
お母さんが一人で、預かるには大変だと思う。
子供を放って行くなって、葵くんの気持ちも分からないでもない。
けど、私はクラシックコンサートに行きたい。
「そんなに行きたいなら、俺が今度、休みを取って連れてってあげるから。」
不服そうな私に、葵くんは溜め息を吐いた。
「……。」
溜め息を吐かれるのが心底嫌い。
失望したとか、そんな意味が込められてるから。
我儘言うなと、葵くんは呆れてる。
「……何?明と行くのは楽しみでも、俺と行くのは楽しみじゃないの?」
「なんで、そんな事言うの?!」
カッチーン、きた。
私は沸点が低いのだ。
「家庭に入るのを了承したけど、私の人生だよ!生活の面倒を見てくれてるのは感謝してるけど、コンサートに行く、そんな楽しみさえ葵くんにどうこう言われなきゃならないの?!私には家の仕事をして、子育てだけしてろってッ?!」
葵くんに大学を卒業したら、家庭に入って欲しいと言われた。
フランスで働いてみたかった、通訳の仕事に興味があった、それらを捨てて専業主婦になった。
未練がないと言えば嘘になる。
外でバリバリ働く、お母さんを見て育ったから、キャリアウーマンに憧れていた。
「けんか、だめ。ママ、なかせるな。」
積み木で遊んでいた光が言った。
紫が泣き出して、最悪な空気だった。
子供の前で親が言い争う、姿を見せるのは教育に良くない。
……悪過ぎる。
「私は大人しく、光と紫のお世話に専念する。明くんに断りの連絡を入れる。それでこの話はおしまい。」
夫である葵くんにそう言い、泣いてる紫を抱き上げてあやしながら、光に大きな声、出してごめんねと謝った。