君の才能ごと、独り占め
4☆彼の秘密
ある日の放課後、音楽室でプリントを届ける用事を頼まれた私は、一人で特別棟へ向かっていた。夕方の校舎は静かで、窓から差し込む西日が廊下を長く染めている。
音楽室の前まで来たとき、中から微かにピアノの音が聞こえた。
足が止まる。
ゆっくりドアの小窓から中をのぞくと、誰もいない音楽室のグランドピアノの前に、一人の男子が座っていた。
榊くんだった。
驚きで息をのむ。
彼の長い指が鍵盤の上を静かに滑っていく。派手ではない、でも信じられないほど繊細で綺麗な音。夕暮れの光の中で、その横顔はいつもよりずっとやわらかく見えた。
私はしばらく動けなかった。