君の才能ごと、独り占め
「どうして隠してたの?」

そう聞くと、彼は少しだけ肩をすくめる。

「目立つの面倒だから」

思わず笑いそうになる。

「それ、榊くんが言う?」

「何」

「十分目立ってる」

「不本意」

真顔で返されて、今度こそ私は笑ってしまった。

すると榊くんは、私をじっと見る。

「また笑った」

「え?」

「音楽の話してるときのおまえ、自然」

その言葉に、胸が詰まる。

最近の私は、音楽の話をされるのが少し怖かった。期待とか評価とか、そういうものが先に来るから。

でも今は違う。

彼は私の才能に憧れているようでいて、そこに飲まれていない。ただ私の顔を見て、私自身の変化を言葉にしている。

「榊くん」

「なに」

「私ね、ピアノが嫌いになりかけてた」

自分でも、どうしてそんなことを言ったのかわからない。

誰にも話していなかったのに。
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