君の才能ごと、独り占め
文化祭当日の講堂裏は、独特の緊張感に包まれていた。

舞台袖を行き交う生徒たち。
台本を確認する声。
マイクテストの音。
客席から遠く聞こえてくるざわめき。

私は控えめな深呼吸をひとつして、膝の上で指先をそっと握った。

冷たい。

やっぱり緊張しているんだと思う。

クラスの音楽喫茶のシフトをひと通り終えたあと、私は講堂プログラムの控室に移動していた。
さっきまで教室では明るく笑えていたのに、いざ本番が近づくと胸の奥が落ち着かない。

ソロで弾くと決めたのは自分だ。
恒一くんに背中を押してもらって、ちゃんと自分の意志で選んだ。

後悔はしていない。

でも、怖さが消えるわけじゃない。

大勢の前で弾くこと。
才能だけを見られること。
また期待の目に飲みこまれそうになること。

その全部が、少しだけ怖かった。
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