君の才能ごと、独り占め
そう思って少しだけためらった私に、恒一くんは静かに言った。

「もう隠さなくてもいい」

胸がどくんと鳴る。

「……いいの?」

「今日、十分バレてる」

「たしかに」

「それに」

彼はつないだ手を少しだけ握り直した。

「俺の彼女だって、ちゃんとわかってほしい」

その言葉に、胸がいっぱいになる。

私は小さく笑って、彼の手を握り返した。

「うん」

夕焼け色の廊下を、ふたりで並んで歩く。
すれ違う生徒たちがこちらを見て、少し驚いた顔をする。
でももう、嫌じゃなかった。

だって今の私は、才能に憧れられるだけの女の子じゃない。

クールな彼に、どうしようもないくらい愛されている。
それが何より、幸せだった。

昇降口を出るころには、空は薄紫に変わっていた。
文化祭の名残を背に、私たちは駅までの道をゆっくり歩く。
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