青く、淡い、フィルターの向こう側  -あの頃、好きと言えなかった君と大学で再会した-

③繋がり -現在-

中学卒業前に自分から連絡先を聞いていたらよかったかもしれない。

でも、あの頃の自分はちょっとだけ夏希から聞いてくれるかもしれないと期待していた。

映画オタクでクールで、たまにちょっと可愛い夏希が自分に興味を持ってくれていればいいと。だからあえて訊かなかった。

そうしたら本当になんのリアクションもないまま、卒業し、今にいたる。

けれど再会して由紀の方から一歩踏み出すと、夏希は快く歩み寄ってくれた。

「夏希くんはなんか、上京とかするんかなって勝手に思いよったよ」

繋がったトークルーム画面で意味もなくスタンプを押したあと呟くと、あっけらかんとした面持ちで夏希は言った。

「したかったで。でも家族みーんな芸術系受けるんは反対。頭固いからな」

「うちも似た感じや」

かつて二人で映画関係の仕事に就くにはどうしたら良いか話し合っては、映像技術の学科がある芸術系の大学を目指そうと盛り上がったのを思い出す。

けれどそれは結局、身内の大反対によって呆気なく散った。

夏希の場合はどうなったのか分からなかったが、ちょっと周りと違う雰囲気を持っているので夢を叶えてしまいそうだと勝手に思い込んでいた。

しかし意外にも同じ境遇だったらしい。

「ま、いいけどな。上京出来んと打つ手なしやないし。まぁそこでしか得られん人脈とかは逃すやろうけど、これがあるし」

スマホを軽く振って口角を上げる夏希に、確かにと頷いた。ありがたい時代である。

一台あれば何でも出来るのだから。

「そうやね。私は映像系は諦めたけど、心機一転で今は翻訳家目指しとる」

「いいやん」

「ありがとー?」

若干棒読みで笑うと夏希が喜色を孕んだ吐息をこぼす。

「なにその反応」

何気ない問いに、懐かしさを感じる。夏希は意外とよく見てくれているのだ。

「や、今の時代AIがあるけん消える職やろって皆んなが言うからさぁ」

「そいつら分かっとらんな」

「やろ?字幕と吹替えで微妙な違いあるやん。それに翻訳家次第でニュアンス変わったり。役者の表情とか前後の繋がりとか、キャラクター設定とか、そういう余白的なもんぜーんぶ読み取って、誰に届けるか考えて翻訳する仕事めっちゃカッコイイし、職人技やのにね」

思わず熱がこもり語ったが夏希相手なら気恥ずかしくはならない。むしろ安心して話せた。

そしてやはり、その感覚は間違っていなかった。

夏希は素晴らしい共感力を見せつけてくれたのだ。

「分かるわ、それ。タイパ時代の不合理から生まれるもんがちゃんとあるのにな」

「なにその格言みたいな台詞。かっこいい……」

「やめろや」

映画に関してはドンピシャで相性がいい存在。その人の前でだけなら、丸裸の心で将来の夢を語っても許されるのだ。

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