イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。
七月の終わりの教室は、冷房が効いていてもどこかだるい。
窓の外では、蝉の声が絶えず鳴いている。

紬はノートを開いたまま、何度も前の席の斜め後ろを見てしまった。
湊は頬杖をついて黒板を見ている。
横顔はいつも通りきれいで、静かで、遠かった。

昼休みになっても、彼はすぐに席を立ってしまった。

「白石さん、大丈夫?」

真帆の声で、紬ははっとする。

「顔、ちょっとしんどそう」

「……平気」

そう答えた声は、自分で思ったより弱かった。

真帆は少しだけ迷ってから、小さく言った。

「朝比奈くんと、なんかあった?」

紬はすぐに答えられなかった。
あった。
でも、何があったのかを一言で説明できない。
近づいた。
通じた。
なのに離れた。
そんなの、自分でもうまくわからない。

「たぶん、私が期待しすぎたのかも」

そうこぼすと、真帆は眉を寄せた。

「それ、ほんとに白石さんだけのせい?」

その言葉に、紬は少しだけ救われる。
でも、救われるほど泣きそうになる。
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